コラム

人手不足の原因はブレグジットじゃない 地に足つかない若者たち

2023年02月17日(金)15時10分

しかし労働力不足は、移民の減少だけが原因ではない(事実、今もイギリスの移民の割合は高い)。50歳以上の人たちが早期退職を選んでいることも一因だ。コロナ禍をきっかけに人生の優先事項を見つめ直した人が大勢いるのだ ( 「年を取るまで一日中働き続けるには、人生は短すぎる!」)。

ある意味、若者にとってはチャンスだ。裕福な高齢世代がいい仕事を独占しなくなれば、若い世代にチャンスが巡ってくる。

イギリスで不足している労働力を示す、驚くほど具体的な数字がある。36万人だ。だが、もう1つの具体的な数字がある。職業訓練・教育機関のシティ・アンド・ギルズによれば、働く気がない18〜24歳の若者が22万7000人いる。裕福な高齢世代は人生を見直して賢明に早期退職を決めているかもしれないが、若者たちは単に昔ながらの「ドロップアウト」をしているだけだ。

イギリスとそこに住む若者たちは、経済が厳しい今こそ現実を直視すべきだ。メディアやファッションなど華やかな業界で働きたいという非現実的な期待を抱く大卒者を減らし、手に職を付けた若者を増やす必要がある。労働市場の逼迫は以前からあった問題が顕在化しただけで、ブレグジットが引き起こした問題ではない。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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