- HOME
- コラム
- パリの欧州・EU特派員
- コロナ後の新しい五輪モデルは「2024年パリが示す…
コロナ後の新しい五輪モデルは「2024年パリが示す」と仏意欲 東京には何ができるか
サーフィンの問題
「例に」と言いながらサーフィンを出しているが、実はこの競技は五輪の新しい問題の種なのである。
サーフィンは、2020年東京五輪で初めて、オリンピックの種目となった。会場は、千葉県長生郡一宮町の釣ヶ崎海岸(通称:志田下)と決まっている。
この時点で既に「東京」ではないのだが、でもまだ近い。パリ五輪に至っては、約1万7500キロ離れている地球の反対側、タヒチでの開催となった。タヒチは、フランス領ポリネシアに属してはいる(海外県ではない)。
ドゥリュ氏は「例えばタヒチやハワイなどを、常にオリンピックの会場とする」と言っているが、タヒチならフランス領、ハワイならアメリカの州である。2028年のオリンピックは、ロサンゼルスと決まっている。
フランスのスポーツ紙『レキップ』は「どっちなのだ」と書いているが、大いに政治的な問題になる可能性がある。
ただ、1ヵ所に決めてしまうことは、今後「海なし国」の開催となったときの解決策にはなるだろう。
どんどん増える競技数
サーフィンの件は、二つの問題をはらんでいる。
一つは、どんどん増えていく競技の問題だ。
東京オリンピックでは、五つの新しい競技が加わった。
サーフィンの他に、空手(型・組手)、スケートボード(ストリート・パーク)、スポーツクライミング(ボルダリング・リード・スピード複合)、そして正確には「復活」の男子野球&女子ソフトボールである(1競技2種という扱い)。
ドゥリュ氏は、新しいモデルとして「プログラムに追加するスポーツの数を制限すること」があると述べている。
そしてもう一つは、「オリンピック精神」の問題である。
そもそもドゥリュ氏は、新型コロナウイルスの問題が起きる前は、タヒチでの開催に反対であった。
昨年12月、パリの大会組織委員会が、サーフィン会場をタヒチに決定したとき、彼は投票を棄権した。
「波の質についての議論は完全に理解しています。でも、飛行機で21時間もかかる場所です。これではオリンピック中に開催される『世界サーフィン選手権』になるだろうという印象です」と理由を言った。
「私はオリンピック精神の擁護者です。私にとって、サーファーはオリンピックを経験しないでしょう。このようにかけ離れたオリンピックは、もはや(近代オリンピックの基礎を築いた)クーベルタンが描いたものではありません。私は一つのオリンピック村を信奉しています。分散は、オリンピック精神を失う可能性があります」
この筆者のコラム
危機下のウクライナに「ヘルメット5000個」 武器提供を拒むドイツの苦悩 2022.01.29
冷戦思考のプーチン、多様性強調のバイデン 米欧露が迎える新局面とは? 2021.12.28
タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は? 2021.08.30
タリバンはなぜ首都を奪還できたのか? 多くのアフガン人に「違和感なく」支持される現実 2021.08.26
アフガン難民はどこへ? 受け入れめぐるEU加盟国の不満といさかい 2021.08.25