コラム

コロナ後の新しい五輪モデルは「2024年パリが示す」と仏意欲 東京には何ができるか

2020年05月18日(月)14時35分

サーフィンの問題

「例に」と言いながらサーフィンを出しているが、実はこの競技は五輪の新しい問題の種なのである。

サーフィンは、2020年東京五輪で初めて、オリンピックの種目となった。会場は、千葉県長生郡一宮町の釣ヶ崎海岸(通称:志田下)と決まっている。

この時点で既に「東京」ではないのだが、でもまだ近い。パリ五輪に至っては、約1万7500キロ離れている地球の反対側、タヒチでの開催となった。タヒチは、フランス領ポリネシアに属してはいる(海外県ではない)。

ドゥリュ氏は「例えばタヒチやハワイなどを、常にオリンピックの会場とする」と言っているが、タヒチならフランス領、ハワイならアメリカの州である。2028年のオリンピックは、ロサンゼルスと決まっている。

フランスのスポーツ紙『レキップ』は「どっちなのだ」と書いているが、大いに政治的な問題になる可能性がある。

ただ、1ヵ所に決めてしまうことは、今後「海なし国」の開催となったときの解決策にはなるだろう。

どんどん増える競技数

サーフィンの件は、二つの問題をはらんでいる。

一つは、どんどん増えていく競技の問題だ。

東京オリンピックでは、五つの新しい競技が加わった。

サーフィンの他に、空手(型・組手)、スケートボード(ストリート・パーク)、スポーツクライミング(ボルダリング・リード・スピード複合)、そして正確には「復活」の男子野球&女子ソフトボールである(1競技2種という扱い)。

ドゥリュ氏は、新しいモデルとして「プログラムに追加するスポーツの数を制限すること」があると述べている。

そしてもう一つは、「オリンピック精神」の問題である。

そもそもドゥリュ氏は、新型コロナウイルスの問題が起きる前は、タヒチでの開催に反対であった

昨年12月、パリの大会組織委員会が、サーフィン会場をタヒチに決定したとき、彼は投票を棄権した。

「波の質についての議論は完全に理解しています。でも、飛行機で21時間もかかる場所です。これではオリンピック中に開催される『世界サーフィン選手権』になるだろうという印象です」と理由を言った。

「私はオリンピック精神の擁護者です。私にとって、サーファーはオリンピックを経験しないでしょう。このようにかけ離れたオリンピックは、もはや(近代オリンピックの基礎を築いた)クーベルタンが描いたものではありません。私は一つのオリンピック村を信奉しています。分散は、オリンピック精神を失う可能性があります」

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国CPI、2月は0.7%下落 昨年1月以来のマイ

ワールド

米下院共和党がつなぎ予算案発表 11日採決へ

ビジネス

米FRBは金利政策に慎重であるべき=デイリーSF連

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 7
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 8
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story