コラム

なぜドイツで極右AfDが躍進しているのか──5つの理由と、東側ブロック崩壊35年で「反動の時代」

2025年02月20日(木)16時35分
アリス・ワイデル

AfD共同党首のアリス・ワイデル(2024年1月、ベルリン) Juergen Nowak-Shutterstock

<10年前は支持率一桁だった政党が欧州の脅威に。その要因に迫る>

2月23日にドイツの連邦議会選挙が行われる。

選挙キャンペーンが本格化してからこの1カ月、連邦議会では激震続きであった。台風の目は、常に極右と言われる「ドイツのための選択肢(AfD)」党である。AfDの台頭は、ドイツにとってだけではなく、欧州にとって大きな不安要素である。

世論調査によると、AfDの支持率は約20%で、2位の座を保ち続けている。1位は中道右派のCDU/CSU(キリスト教民主同盟・社会同盟)で、約30%だ。3位はショルツ首相の所属する中道左派の社会民主党で約16%。4位は同盟90/緑の党で13%前後である。

2015年9月以前は有権者の2~6%の支持にすぎなかったのに、なぜこれほどまでに支持率を高めたのだろうか。ミュンヘンに本社を置く南ドイツ新聞は、5つの理由を分析している。

まず最初に「恐怖」である。

筆頭は移民問題だ。2015年9月、メルケル政権はハンガリーに足止めされていた難民・移民に、ドイツへの入国を許可した。彼らはドイツ国内になだれこみ、その後数カ月で89万人が難民申請を行ったのだ。

AfDはこの移民政策を厳しく批判して、怒りの代弁者としての地位を確立することに成功した。このことを同紙は「恐怖」と表現した。

次に、「政治的な正しさ(ポリティカル・コレクトネス)」問題である。

アリス・ワイデル共同党首は、「政治的な正しさは歴史の屑溜めに属するものです」とケルンでの党大会で発言した。

AfDはジェンダーに配慮した言葉遣いを嘲笑。伝統的な家族を擁護し、同性婚を批判する。さらに、ドイツ人が再び国への誇りを公然と表明できるようにすることを要求する。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ロシア産LNG輸入を拡大へ 昨年は3.3%増

ビジネス

メタCEO、2018年にインスタグラム分離を真剣に

ビジネス

米国株式市場=小反落、ダウ155ドル安 関税巡る不

ビジネス

ユナイテッド航空、第2四半期見通し予想下回る 景気
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 7
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story