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EU・インド急接近で変わる多極世界の地政学...「新スパイスの道」構想は前進するか

ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長(左)とインドのナレンドラ・モディ首相(2月28日、ニューデリー) Sonu Mehta/Hindustan Times/Sipa USA via REUTERS
<世界秩序が急変するなか、両者はどんな「共通の利害」を見出しているのか>
欧州連合(EU)とインドが急接近している。
「紛争と激しい競争の時代にあって、我々には信頼できる友人が必要だ」と、EUの欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、デリーに到着するや否や、こう述べた。
両者は「年内」に自由貿易協定(FTA)を締結することで合意しただけではない。安全保障と防衛の分野などで協力の意向を明らかにした。さらに、インドと欧州を結ぶ「新スパイス(香辛料)の道」構想が、新たに息を吹き返すかもしれない。
両者がにらんでいるのは、ロシア、中国、アメリカだ。多極化のバランスが崩れる世界にあって、どのような思惑があって接近しているのだろうか。
FTA締結に向けた協議は過去にも
今回、熱いアプローチをしたのはEU側である。
インドを訪問したフォンデアライエン委員長は2月27日に「惑星は一直線に並び、ヨーロッパとインドも同様です」と述べるなど、最大級の友情と期待を示してみせた。インドのナレンドラ・モディ首相は、大変ご満悦の様子だった。
この変わりぶりに多くの人は驚いた。
実は、EUとインドの貿易協定の話は今に始まったことではなく、ずっと停滞していたのだ。
2007年からFTAの締結を目指して交渉を始めたものの、2013年に中断された。2022年に交渉は再開されたが、主にインド側の保護主義(高関税と非関税障壁)、そしてEU側のインド人に対するビザ発給制限で、また同じ障害にぶつかっていた。
インドにとってEUは、アメリカや中国を上回り、最大の貿易相手となっている。2023年には1240億ユーロの物品が取引され、インドの総貿易額の約12%となっている。だからこそ、共通の標準をつくるためにもFTAは望まれていたのだが、両者に意志が欠如していた。
それが今、大変な熱の入れように変わった。
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