- HOME
- コラム
- パリの欧州・EU特派員
- 危機下のウクライナに「ヘルメット5000個」 武器…
危機下のウクライナに「ヘルメット5000個」 武器提供を拒むドイツの苦悩
「緊張状態を悪化させるだけ」として武器提供を拒否した独ショルツ首相(1月21日) Michael Sohn/Pool via REUTERS
<第二次大戦の「過ち」を繰り返すことになるとして、ドイツは武器提供を認めていない>
ウクライナ情勢が、緊迫感を増している。
バイデン大統領は1月21日「ロシアのウクライナ侵攻はあると思う」と発言。アメリカと英国が声高に危機を叫び、各国の大使館員や、同国民の退避が始まっている。
そんななか、針のムシロとなっているのが、ドイツである。
ウクライナから何度も軍事支援を頼まれているにも関わらず、ドイツのショルツ政権は、改めて拒否を示した。ここでいう「軍事支援」とは、何も軍隊を送るようなことではない。武器の提供である。
アメリカ、英国、バルト三国、ポーランド、チェコ等は、ウクライナへ武器を提供する。
こう書いている間に、ドイツがウクライナにヘルメットを5000個を供与すると発表し、これまた火に油を注ぐ事態になっている。
ショルツ政権は、武器提供は現在の緊張状態を悪化させるだけであるとし、外交での解決を望んでいる。
これらの報道を見るたびに、ドイツの立場が日本に近く感じられて、複雑な思いを抱いてしまう。
実はこの問題には、第二次大戦の歴史問題が大きな影響を及ぼしている。その話に入る前に、ドイツがどんな非難を受けているか、どのような状況かを説明したい。
アメリカやウクライナから非難轟々
ドイツには紛争地域へ無許可で武器を輸出するのに規制がある。
この規制は、第三国を経由して提供される場合にも適用されるため、ドイツはエストニアに対し、ウクライナへドイツ軍の武器を送ることを拒否した。
この態度に対して、ウクライナから猛反発がうまれたのだ。同国のクレバ外相のインタビューを、ドイツの『Die Welt』紙は掲載した。ここで外相は「失望した」と語っている。
また、ドイツの大衆紙『Bild』は、首都キエフの市長で、元ボクサーのクリチコ氏がドイツを非難する記事を掲載。「危機にある人へ支援しない」「劇的な状況での友人への裏切り」と立腹している。
このクリチコ市長は、5000個のヘルメット供与に対しても、同じく『Bild』紙に対して、「言葉を失った」「ヘルメット5000個なんて冗談もいいところだ」「次は何を送るつもりだ? 枕か?」と、皮肉を言って不満を表明しているという。
このように、ウクライナの猛反発をドイツの新聞が伝えているのだが、前述のどちらの新聞も、保守的なメディアグループであるアクセル・シュプリンガーに属するものであると、フランスの『ル・モンド』は伝えている。
この筆者のコラム
危機下のウクライナに「ヘルメット5000個」 武器提供を拒むドイツの苦悩 2022.01.29
冷戦思考のプーチン、多様性強調のバイデン 米欧露が迎える新局面とは? 2021.12.28
タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は? 2021.08.30
タリバンはなぜ首都を奪還できたのか? 多くのアフガン人に「違和感なく」支持される現実 2021.08.26
アフガン難民はどこへ? 受け入れめぐるEU加盟国の不満といさかい 2021.08.25