コラム

タリバン、国際資金枯渇の危機:米ドルで三重苦 アフガニスタンの財源は?

2021年08月30日(月)19時40分
アフガニスタンの両替商たち

ヘラート州の両替市場で、外貨を扱うために集まる両替商たち(2018年6月) Jalil Ahmad-REUTERS

<破綻も時間の問題か>

※当記事はYahoo!ニュース 個人に投稿されたコラム(2021年8月23日付)からの転載です。

アフガニスタンの首都カブール陥落前夜の8月14日。

住民たちは資産を引き出すために銀行やATMに殺到した。銀行の前には、すべてのお金を引き出そうと延々と長い行列ができた。

しかし、お金をおろすことはできなかった。銀行は閉鎖されてしまい、今も閉鎖されている。そして絶望した人たちは、国外に亡命しようとしている。

また、外国に住んでいる家族や事業仲間からの送金に頼っている人にとって、重要な送金事業者であるWestern Unionも機能していない。

アフガニスタンの経済は、全体から見れば主に現金払いで成り立っているので(現物支給もある)、人々の日常生活に今のところは大きな支障は出ていない。

しかし、国の運営資金は別である。

アフガニスタンでは、国際的な資金が次々と枯渇している。

米国当局はドル送金を停止、国際通貨基金(IMF)は支払いを凍結し、国内総生産(GDP)の42%を占める国際援助はほぼ停止している。フランスの『ル・モンド』紙が伝えた。

いわば三重苦に陥っていると言える。ほぼ完全に外貨が凍結された状態で、この国はどれだけ持ちこたえることができるだろうか。

アメリカにあるお金の送付が停止

三重苦の一つ目は、アフガニスタン政府がアメリカに保有していた外貨準備の送金停止である。

日本の外貨準備は、日本銀行が保有している。しかし、同国の外貨準備は、大半が海外の口座、特にアメリカに預託されている。

今までは、アフガニスタン中央銀行(以下、アフガン中銀)は、保有するお金を、毎週アメリカからドルで送られて受け取っていた。

カブール陥落の直前、アメリカ政府は、封印された米ドルの札束の、最後の出荷を止めた。

カブールが陥落した8月15日(日)、アフガン中銀の総裁代理のアジュマル・アフマディ氏は、軍用機で国外に脱出した。

彼は「日曜日にドルの輸送が予定されていたにもかかわらず、金曜日にはもう輸送はないという連絡を受け取っていた」と言った。

それでは、アフガニスタン政府は、どのくらいのお金をアメリカに持っていたのだろうか。

『ル・モンド』紙によれば、最新の年次バランスシートによると、アフガン中銀はニューヨークに12億5000万ドル(約1375億円)を保有し、外国の銀行に30億ドル(約3300億円)以上の預金、さらに40億ドル(約4400億円)以上の米国財務省の証券を保有していた。

95億ドル(約1兆450億円)にも上るアフガン中銀の外貨準備のお金は、ほとんどは外国の預金となっていて、特にニューヨーク連邦準備銀行、世界銀行、国際決済銀行(BIS)にある、と報じた。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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