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アパホテル炎上事件は謝罪しなければ終わらない
ところが、だ。中国ナンバーワンの人気トーク番組「鏘鏘三人行」の準レギュラー格であり、中国では空港でも街中でも盗撮されるほどの著名人である私が怒りとともに意見を表明したのに、まったく話題にならなかった。それはなぜだろうか。
答えは「日中関係の改善傾向が炎上につながった」というものだ。なぜ日中関係がよくなるとアパホテルが炎上するのか、中国独特の政治力学を知らないとさっぱり理解できないだろう。
1年前の冬には日中関係は冷え込みきっていたため、これ以上の材料を提供すれば大衆の日本叩きが過熱すると当局は判断したのだ。一方で、回復基調にある現在ならば釘の一本でも刺しておくのはありだと炎上を認めたということ。そうでもなければ、共産党準機関紙に批判コラムが掲載されることはない。
【参考記事】日中間の危険な認識ギャップ
中国の愛国主義は常に敵を必要としている。汚職政治家、反動分子、外国政府、外国企業と対象は常に移り変わるが、いつもなにかしらの敵を必要としているのだ。敵がいなければ国家の元に一致団結できないのが愛国主義の思想であり、そのため中国は常に敵を求めている。
週末に計画されていた中国人の抗議デモ
ひとたび火がついた愛国主義の動きは、なんらかの落としどころがなければ鎮火しない。アパホテル側は時が過ぎれば忘れられると思っているかもしれないが、そんなことはない。
実際、1月22日の日曜日には、都内のアパホテルに対する抗議デモが在日中国人の間で計画されていた。100人近くが含まれるSNS「微信(WeChat)」のグループで、デモをやろうということで盛り上がっていたのだが、結局、誰もリーダーをやりたくないからか責任の押し付け合いが始まった。当局の主導がなければ組織行動ができないという中国人の悪い癖が出て計画は頓挫したが、怒りの火は今も消えてはいない。
2013年にアップルが中国で槍玉に挙げられたのを覚えているだろうか。CCTV(中国中央電視台)の特別番組で、iPhoneの修理サービスが取り上げられた。「他国では新品と交換してくれるのに、中国では裏蓋だけは古い機種のものが使われている。これは差別だ」という内容だ。アップルの対応は中国の法律に対応したもので差別とは言い切れなかったのだが、謝罪を拒むアップルに官制メディアは「比類なき傲慢さ」などの言葉で猛批判。中国ネット世論もバッシングに加わるなか、ついにアップルは謝罪した。
中国の企業向け炎上対策マニュアルでは、愛国主義的バッシングを受けた時には速やかな謝罪が必要だと書かれている。さもなくばアップルのような世界的企業ですら大きな傷を負ってしまうのだ。アパホテルは中国では事業を展開していないため、中国人客が一時減っても大丈夫だと高をくくっているのかもしれないが、このまま盛り上がりが続くようだと、アパホテルの代わりに別の日本企業がやり玉にあげられてもおかしくはない。
企業だけで済めばまだましだろう。2月に札幌市と帯広市で開かれるアジア大会の組織委員会が、札幌で選手の宿舎となるアパホテルに対して「スポーツ理念にのっとった対応を」と配慮を要請しているらしい。スポーツイベントにもマイナスの影響を与える事態となれば、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催にもつながっていく恐れすらある。
不当な要求に謝罪させられるのはやりきれないが、今回に限ってはアパホテル側に非があることは明白だ。傷が浅いうちに事態沈静化へのアクションを起こすべきだろう。
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