コラム

中国大手32社が「不審死&経営難」海南航空と同じ運命をたどる!?

2018年08月14日(火)13時00分

フランスで「事故死」した海航集団の王健会長(写真は13年4月) REUTERS

<7月にフランスで「事故死」した中国大手航空会社・海南航空の王健会長。ナゾを解くカギは米国亡命中の「中華文春砲」こと郭文貴のリークにあるが、この問題、まだこれで終わらない>

今、おそらくはあの馬雲(ジャック・マー)も含む、中国の大企業家たちが不安にさいなまれているのをご存じだろうか。そして、大企業家でない私・李小牧も。

発端となったのは、今年7月3日に中国の大手航空会社「海南航空」を傘下に持つ海航集団(HNAグループ)の王健会長(57)が、フランス出張中に死亡したことだ。南仏プロバンス地方の教会で、写真を撮るために高さ15メートルもの壁によじ登ろうとして転落したという。

つまり事故死ということになるが、この公式発表を信じる人など一人もいないだろう。少しでも事情を知っている人ならば、100人中100人が暗殺されたと信じている。

海南航空のバックにいるのは習近平の右腕

まず、簡単に経緯を説明しよう。

海南航空は中国4大航空会社の一角を占める。他の航空会社が北京、上海、広州という大都市を拠点としているのに対し、海南航空は中国南部の海南省という田舎(失礼!)が本拠地だ。

1989年創業と歴史も浅いが、爆発的成長を続けてきた。積極的な買収によって、香港エクスプレス、新華航空、山西航空、長安航空などを子会社に。さらには中国内外で不動産事業を展開するほか、経営危機に陥ったドイツ銀行の筆頭株主になるなど、投資を武器に事業を拡大してきた。

投資を支えたのは銀行の融資だ。湯水のように投資を得て、その莫大な資金力で好き放題に買収をくり広げることによって、海南航空は成長した。

なぜ、中国の銀行は海南航空に融資したのだろうか? 同社の投資手腕を評価したから、ではない。中国では、銀行から金を借りるために必要なのは事業計画でも担保でもなく政治力だ。強力な政治家をバックに持っているからこそ、無尽蔵に金が借りられたのだ。

ところが昨年7月、米国亡命中の大富豪、郭文貴が海南航空の問題を暴露した(郭がどんな人物については私の過去のコラムを読んでほしい)。同社のバックにいるのは習近平の右腕・王岐山であること、「白手套」(白手袋。違法マネーをロンダリングする仲介者を意味するスラング)として王岐山の資金源になっていたことを明かした。

【参考記事】「中華文春砲」郭文貴と、29年成果なしの民主化運動家の違い

このリークをきっかけに海南航空は経営危機に追い込まれていく。というのも、郭文貴のリークは世界的な注目を集めたからだ。中国共産党ですらもみ消しは難しい。

この状況で政治力によって銀行融資を獲得するようなことがあれば、政敵にとっては格好の批判材料となってしまう。いつでも銀行融資が得られるという前提で投資していたのだ。頼みの綱が失われれば、あっという間に資金が枯渇してしまう。

かくして海南航空は、燃料代が払えない、航空機メーカーに代金を支払えないといった異常事態に陥る。買い漁った海外資産を売却してなんとか現金を捻出しようとしたが、資産はすぐに売れるものでない。結局、今にいたるまで資金繰りに苦しむ状況からは脱していない。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イラン交渉団、和平目指し直接会談 パキスタン交

ワールド

米軍がホルムズ「掃海」とトランプ氏、イランTVなど

ワールド

バンス米副大統領、パキスタンのシャリフ首相と会談

ワールド

米が資産凍結解除に同意とイラン筋、米当局者は否定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦によって中国が「最大の勝者」となる理由
  • 2
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけない副作用に研究者が警鐘
  • 3
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 6
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人…
  • 7
    革命国家イラン、世襲への転落が招く「静かな崩壊」
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story