ドイツの街角から
ドイツワイン業界の最新トレンド ヴィノテーク建築賞受賞ワイナリーを訪ねて・その1
文豪ゲーテは、「悪いワインを飲むには、人生はあまりにも短すぎる」と言った。
美味しいワインに出会うにはヴィノテーク(ワイナリー/ワインセラー)で試飲しながら、お気に入りや新しい味を発見するのが近道だろう。その上、ヴィノテークがモダンでユニークな建築物とあれば、忘れられないひと時となるに違いない。
今、ドイツワイン業界の最新トレンドとして、ヴィノテークは単に試飲しながら会話するスペースとしての機能を果たすだけでなく、建築物としても話題をさらっている。一見してホテル、それとも近代的なオフィス?と思うくらい、洗練されているからだ。
ドイツワイン協会(DWI)は昨年、「独ヴィノテーク建築賞TOP30」受賞者を発表し、受賞ワイナリーを表彰した。筆者はこの授賞式に参席させていただき、ワイン造りに情熱を傾ける生産者に出会った。
そしてコロナ禍も下火になった今年5月下旬、ヴィノテーク建築賞に選出されたワイナリーを巡り、モダンでユニークな建築物と美味しいワインを体感するチャンスを得た。(画像はすべて筆者撮影)
ヴィノテーク建築賞とは?
伝統的なヴィノテーク建築を独創的にリデザインし、印象的な新建築を数多く建設することで、ワイン生産者は最近、地元のヴィノテークとワインバーの景観を印象的に蘇らせた。建築、インフラ、素材の調和的な使用という全体的なコンセプトで、現代のヴィノテーク建築は生きたワイン文化の素晴らしい作品に貢献し、伝統の継承と現代の架け橋となっている。
こうした背景からドイツワイン協会は2021年9月末、5年ぶりに2回目のエクセレント・ヴィノテーク・コンクールを開催し、30の受賞者を輩出した。
なお同賞は、ラインラント・プファルツ州建築家会議、ラインラント・プファルツ州ブドウ栽培省、ドイツワイン生産者協会によって選出され、イレギュラーに行われている。
ヴィノテーク建築は、それぞれのワイン生産者の哲学を反映しているだけではない。スレートや貝殻石灰岩の壁材、ブドウの木や使われなくなったワイン樽の木材を使った家具のデザインなど、地元の素材を取り入れることも多く、ガラスやコンクリート、スチールなどのモダンな建材とのコントラストが魅力的だ。
ドイツのワイン生産地は13地域あり、約140種類ものブドウ品種が作付けされており、土壌と気候条件の異なる畑で栽培するブドウの特徴を生かしたワインが生産されている。ブドウ栽培面積は約10万ヘクタール、ワイナリーの数は11,000強と、規模的には小さなものではない。
ここでは今回巡ったミッテルライン、ナーエ、モーゼルのヴィノテーク建築からインスピレーションを受け、ワインから離れた革新的なワインメーカーに出会った旅をお届けしたい。
まずミッテルラインとナーエのワイナリー、次回はモーゼルから紹介したい。
ミッテルライン
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko