ドイツの街角から
ドイツワインのDNA「テロワール」を学ぶ旅 (1) ミッテルライン
ドイツワイン生産地の気候や土壌がワインの個性をどのように特徴づけるのかをテーマに、ワイン産地ミッテルライン(ライン中流)、ナーエ、プファルツを巡りました。地球温暖化の影響で自然環境の変化も進み、ワイン産地特有のテロワールと生産者の対応も多岐にわたります。(画像はすべて筆者撮影)
ワインのDNA テロワール
まず最初に、テロワールとは一体何?よくわからないと思うかもしれません。そこでドイツワイン協会(DWI)による解説を少しご紹介します。
テロワールと言えば、土壌が中心的な役割を果たす、しかし、単にブドウ畑の土壌構造を指すのではなく、むしろぶどう栽培の複雑さを強調するものであり、いくつかの要素が絡みあい、互いに補完し合い、最終的に一体となるものである。
ワインがその明確な故郷(産地)の風味を反映し、その原産地の特徴を「ワインを通して目(と味覚)見えるものにする」こと。したがってテロワールには、土壌だけでなく、ブドウ品種や気候条件、さらにワイン生産者の仕事も含まれ、すべての要素がテロワールという言葉でまとめられ、表裏一体となっている。
ワインのDNAつまりブドウ栽培における土壌に関するあらゆる環境要因、例えば気象条件(日照、気温、降水量)、土壌(地質、水はけ)、地形、標高などブドウ畑を取り巻く全てを意味します。調和の取れたテロワールの相互作用によってワインの個性が生み出されているといってもいいでしょう。(上の画像は、ミッテルラインの特報的なスレート土壌)
生産者は一年を通して育てたブドウを醸造し、ワインとなるまで自分の畑と希望するワインスタイルに最も適しているかを見極めねばなりません。正確に言えば、栽培されるブドウ品種も重要で、その年の生育サイクルの条件は常に異なり、言うまでもなく同じブドウ種でも毎年個性の違ったワインが生まれます。
ミッテルライン (ライン川中流地域)からナーへを経てプファルツに至るテロワールの多様性について、ワイナリーを巡りながら各産地特有の特徴を探りました。今回はミッテルライン、その後ナーエ、プファルツと3回にわたりご紹介します。
ミッテルライン
ライン川中流域の小さなワイン生産地は、ローマ人が最初にブドウ畑を作った場所です。ブドウ畑の面積は約470 ヘクタール。国内13のワイン生産地域の中で2番目に小さい地域です。ワイナリーの多くが家族経営で、ブドウ畑はビンゲンからボン近郊のジーべンゲビルゲ山地までのライン川流域100キロ以上の間にわたる両岸に広がります。
この産地の大きな特徴は、ブドウ畑の9割は斜面及び急斜面にあることです。ライン川流域の土壌は、粘板岩と灰色岩の風化土壌が多く、ブドウ品種の7割はリースリング、そして1割がシュペートブルグンダー(ピノノワール)となります。
ちなみに急斜面でのブドウ収穫は、忍耐と体力そして好きでなければ務まりません。かつてミッテルライン地域では2000ヘクタール以上のブドウ畑が耕作されていたそうですが、急斜面での過酷な重労働が強いられるため土地を手放す人が絶えないといいます。
一方で、若手醸造家が放置されたままのブドウ畑を受け継ぎ、再びブドウ造りに専念するケースもあり、頼もしい限りです。
「急斜面の救世主」とワイン生産者が愛着を込めて呼ぶ、ニコHRS油圧式キャタピラー。
ライン渓谷中流上部は、2002年にユネスコの世界遺産に登録された名所として知られていることから観光客が絶えない人気スポットです。ライン川の蛇行には中世の面影を残す村々や古城があり、無数の険しい岩の尾根によって構成され、印象的な景観をつくりだしています。
ライン川中流域には現在、80程のワイナリーがあります。今回は若手ワイン醸造家7人が出迎えてくれました。
ミッテルラインのワイン女王・・・
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko