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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツワインのDNA「テロワール」を学ぶ旅 (2) ナーエ

ナーへの象徴ローテンフェルスと呼ばれる赤い断崖の麓にあるブドウ畑(c)norikospitznagel

ワイン生産地の気候や土壌がワインの個性をどのように特徴づけるのかをテーマに、ワイン産地ミッテルライン(ライン中流)、ナーエ、プファルツを巡りました。前回に続き、今回はナーへでテロワールの多様性を探りました。(画像はすべて筆者撮影)

ドイツで最も土壌が多様なワイン産地ナーへ

ライン川の支流ナーエ川沿いにある街バード・クロイツナッハへ向かいました。この周辺は、ナーへのワイン産地として有名な地域です。

2000年にわたるワイン生産の長い歴史があるナーへ地域は、ラインヘッセンとミッテルラインに挟まれたドイツ南西部に位置し、ライン川に流れ込むナーエ川の河口から扇状に広がるブドウ生産地です。

ナーへは、国内でも最も土壌の種類に富む地域で180種を超えるとも言われ、今回のキイワード「テロワール」を学ぶのに最適な地域です。ブドウの木は粘板岩、火山性ポルフィリー、黄土、粘土質の土壌で育つため、多様なブドウ品種の栽培、多彩なスタイルのワイン造りが可能です。

モーゼル地方との間に聳えるフンスリュック山地が西からの冷たい風を防ぎ、温暖な気温と豊富な日照量が、降雨量の少ない日当たりの良い渓谷のブドウ栽培に最適な気候に恵まれています。特にリースリングのアロマを際立たせ、フル―ティでイキイキとした酸を持つ軽快なワインが出来上がります。

newsweekjp_20240822081607.jpg中部では、石英(クオーツ)や斑岩(ポーフィリー)、メラフィリー、雑色砂岩などが見られ、バート・クロイツナッハの周辺には風化土壌や砂岩由来の粘土層や、レス、ロームが見られます。

ナーへ全体では約4.200ヘクタールのブドウ畑で栽培されており、主なブドウ品種はリースリング、ミュラー・トルガウ、ドルンフェルダーなどです。ワイン生産者のお気に入りはリースリングで、繊細な味に富み、栽培面積の4分の1を占めています。

マルクスワイナリー

1693年創業の老舗マルクスワイナリーから経営者ライナー氏が夕食に参席しました。同ワイナリーのあるナーエ地域ヴィンデスハイムは、ブルゴーニュのホットスポットとして知られています。

画像・左からナーへワイン女王カタリナ・グレーフさん、ライナー・マルクスさん、ナーへワインCEOビクトリア・クリングスさん、ホテルレストラン・ミューレントーアのキッチンシェフnewsweekjp_20240822075910.jpg

10ヘクタールのブドウ畑ではブルゴーニュ品種を中心に栽培しています。そのため、ブルゴーニュ品質に関しては特にハードルを高く設定し、細心の心遣いをしているそうです。ワインの基本ラインは、比較的若いうちから飲めるフルーティで生き生きとしたワインで、砂、粘板岩、石英斑岩など、ナーエの土壌の豊かさを反映しています。 

newsweekjp_20240822075942.jpgブドウ品種はブルグンダー60%、リースリング20% 妥協のない品質を提供することをモットーにしているそうです。2019年のピノ・ノワールMARXisMUSS Kapitalは、カール・マルクスのラベルが目を引きます。2023年リースリング・シュペートレーゼ・シュヴェッペンホイザー・シュロスガルテンもお薦め。

次は企業と協働のワイナリーへ

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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