World Voice

Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア

平野美紀|オーストラリア

京アニの名作「Free! Eternal Summer」ファンが世界中から殺到するシドニーのプチホテル

1887年に建てられた歴史ある建物をそのまま利用したプチホテル「ラッセル・ホテル」。アニメをきっかけに世界中で一躍有名に…

細部に渡る表現の美しさや誠実で心に響くストーリー、魅力あるキャラクター・・・ 隅々まで手抜きなしのこだわりを感じる高品質な作品作りで、数々の傑作アニメを生みだしてきた京アニこと、京都アニメーション。

そんな京アニの代表作のひとつが、TVアニメ・シリーズ「Free! Eternal Summer」だ。

世界中のアニメ・ファンから熱く支持されるこの作品は、水泳を通じて友情を深めていく若者たちを描いたストーリー。その舞台のひとつとしてシドニーが登場しているというのだから、シドニー在住者としては見ないわけにはいかない。

シドニーは、かつて水泳王者として名を馳せたイアン・ソープ出身の街でもあるが、そこかしこにスイミングプールがあって、世界のトップを目指すスイマーが集まってくるほどなのだから、水泳をテーマに描いた作品の舞台にぴったりではないかと思う。

シドニーが舞台となったことで、作中に登場した同じ場所を実際に訪れて巡るファンも多いそうだ。その中でも、アニメの盛り上がりと共に世界中からファンが押し寄せ、地元でも一躍脚光を浴びたホテルがある。

歴史地区ザ・ロックスにあるホテルに世界中のファンが殺到

シドニーが舞台となっているのは、「Free! Eternal Summer」の12Fr(12回)そして13Fr(13回)のエンディング。12Frは、このシリーズの登場人物の核となる2人=凛と遙がシドニー国際空港に降り立つシーンから始まるのだが、冒頭からシドニーとわかる風景がいくつも散りばめられている。

TVアニメ『Free! -Eternal Summer- 』12Fr WEB版予告動画(京アニ チャンネル・株式会社 京都アニメーション公式YouTube)

空港からバスに乗って中心部へ向かうシーンで描かれているのは、車窓から見えるハーバー・ブリッジだ。バスを降りた2人は、ハイド・パーク、ボンダイ・ビーチと、シドニー観光の定番ともいえるスポットを次々と訪れていく。シドニーの実際の風景が作中に何度も登場し、一度でもシドニーを訪れたことがある人なら、親しみを覚えてしまうに違いない。

聖地巡りにシドニーを訪れるファンに最も人気なのが、凛と遙が宿泊したホテルとして描かれたザ・ロックス地区に実在するホテル、「ラッセル・ホテル」だ。

ラッセル・ホテルは、1887年に建てられた歴史的建造物をそのまま利用したこぢんまりとしたプチホテルで、シドニーの歴史地区でもあるザ・ロックスの目抜き通りに、その長い歴史を物語るべく、佇んでいる。

作中では、外観はもちろん、レセプション、階段、部屋の入口のドアと部屋の造り、さらには、部屋番号が書かれたルームナンバー・プレートや部屋のキーにつけられたキーホルダーまで、そっくりそのままに描かれており、目を見張るばかりだ。

凛と遙が泊まった25号室

凛と遙が泊まった部屋につけられたルームナンバーのプレートは「25」。ファンの人たちはこの部屋を指定して予約するのだそうだ。

ホテルのゼネラル・マネージャーによると、2014年にシドニーのシーンが初めて放送された直後くらいから、25号室を指定して予約してくる人が増え始めたという。最初はほとんど日本人だったが、徐々に世界中から『25号室指定』の予約が急増。放送から2年経った時点でも、25号室の予約は1年先まで埋まっているような状態で、このホテルに一晩泊まるためだけにやってきた人もいたというから驚きだ。

また、凛と遙のコスチュームを着てやってくる日本人客も多く、25号室指定客のほぼ全員が、ドアを開けると入口のところでクスクス笑いだすという。たしかに、細部まであまりにもアニメそのままなので、思わず笑みがこぼれてしまうのだろう。

そのそっくり加減は、舞台となったシドニーの場所を訪ねて巡る旅の中で、実際にこのホテルに滞在したというkai881さんのブログを見るとよくわかる。

また、このホテルだけではなく、シドニーのシーンはどれもこれも、そっくりそのままに描かれていることが、kazupiさんのブログやチャンネル登録者数 47.5万人を誇るアニメ系YouTuberのAnime Americaさんのシドニー訪問記動画でも確認できる。

このように、世界中のFree! Eternal Summerファンの聖地のひとつとなった「ラッセル・ホテル」だが、残念なことに、コロナ禍で一時クローズした後、現在、リノベーション中ということで、今もまだ臨時休業のままとなっている。

歴史のある建物でそこかしこがかなり傷んできているだろうし、部屋も昔のままの造りでバスルームのない部屋もあったため、おそらく現代的に改装するのだろう。個人的にはあまり変わって欲しくない気もしてしまうが、何よりも一日も早い再開を願うばかりだ。〈了〉

▼ラッセル・ホテル The Russell Hotel ※リノベーションのため、臨時休業中(2024年6月時点)

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ