
NYで生きる!ワーキングマザーの視点
「60歳からでも、夢は叶う」名古屋のアイウェアブランド経営者、NYでスタンダップコメディーデビュー!

名古屋でアイウェアブランドを経営する岸さんが、ひとつの大きな挑戦を果たした。それは、英語でのスタンダップコメディーにチャレンジし、ニューヨークの舞台に立つというもの。異色ともいえるこの挑戦のきっかけは、元ニューヨーク在住で、現地のスタンダップコメディアンとして活躍してきた日本人レジェンド、小池良介(こいけ りょうすけ)さんとの出会いだった。
小池さんが参加したスピーチコンテストで、岸さんは審査員(コメンテーター)を務めていた。圧倒的な存在感と、ニューヨークでスタンダップコメディーをしていたという異色の経歴が、岸さんの心に深く残ったという。
その後、小池さんのオンライン講座を発見。「僕もスタンダップコメディーに挑戦してみたいです」とメッセージを送ったことをきっかけに、小池さんからマンツーマンのコンサルティングが始まった。
若い頃から英語や海外文化に強い興味を持っていた岸さん。音楽を通してアメリカに憧れ、大学は上智大学に進学。29歳の時には仕事でロサンゼルスに住み、西海岸カルチャーに触れた経験を持つ。その経験は、自社のアイウェアブランドにも生かされているという。
60代を目前にして「何か新しいことを始めたい」と英語学習を再開。そこからスタンダップコメディという全く新しいジャンルに飛び込んだ。
小池さんの講座では、実際のネタ音声をもとにひたすら「発音」に集中し、オンラインミーティングでのフィードバックを重ねた。また、自身でもネタを3本制作し、ニューヨークのコメディークラブで披露したという。
筆者も会場へ足を運んだが、岸さんがデビューを飾ったのは、Gotham Comedy Club。
ニューヨーク出身のアフリカン・アメリカンのコメディアン、クリス・ロックやサインフェルド(1990年代の米国ドラマ。ニューヨークを舞台にしたシットコム)でお馴染みのコメディアン、ジェリー・サインフェルドほかの写真が壁にずらりと並ぶ、まさにNYコメディアンの「聖地」。
客席には、20代から30代が中心の地元のニューヨーカーたち。岸さんの英語で繰り出すジョークに、笑いが起こった。
以下では、その挑戦の舞台裏や想いについて、岸さんに詳しく伺った。
もともと英語や海外文化に興味を持ったきっかけは何ですか?
音楽です。中学時代にKISSやCheap Trick, TOTOなどで育ったのでロックやアメリカに対する憧れがあり、いつか住んでみたいと思っていました。そのためには英語が必要なので勉強も頑張れ、上智大学に入ることができました。
Red Hot Chili Peppersのデビューに衝撃を受け、そこからは西海岸のカルチャーに興味を持ち、29歳の時に会社の仕事で1年半LAに住んでいました。その後、立ち上げた自社ブランドのデザインには、西海岸のカルチャーエッセンスを詰め込んでいます。
英語のスタンダップコメディーという新しい分野に飛び込む際、どんな不安や葛藤がありましたか?これは一番気になります。会場はアメリカ人ばかりで、日本から来たばかりなので、ニューヨークのローカルなノリをつかめない状況で、飛び込む勇気は本当にスゴイです。
大学時代に芝居をしたり、いまは講師として全国各地に年間50ほど登壇しているのでステージで話すことに関しては不安はありませんでした。加えて新しいことや珍しいことに挑戦するのが好きなので、ワクワクしかなかったです。変わった経験だと、バリ島の魔術師の元に一週間弟子入りしたこともあります。
ただ今年に入り、宿泊や飛行機の予約が完了した頃から、猛然と不安になりました。一番は「英語」です。1対1の日常会話がなんとかできたとしても、ステージで話すのは初めてなので、自分の発音が通じるのかものすごく不安で、オンライン英会話のレッスンを複数受けて準備しました。1月からは毎日1時間は英語をやっていました。
小池さんとのオンラインミーティングでは、どのようなトレーニングを受けましたか?一番難しかったことは?
実際に小池さんがステージでやってウケたネタを、英語で収録していただきました。それを意味を考えずに繰り返し「発音」することでスタンダップコメディーの英語になれるようになりました。少しずつネタをいただき、オンラインで繰り返しミーティングを重ねました。
ジョークやネタはどのように作りましたか?実体験を元にしたのですか?
自分のネタも3本作り、今回、ニューヨークの他のクラブでも披露しました。英語を学ぶ過程で体験したネタや、地元の名古屋の「これならウケるかも」と考えたネタです。英訳は生成AIをつかい、ニューヨークでのスタンダップコメディーっぽくしてもらいました。
ニューヨークに行く前の心境はどうでしたか?
ただただ緊張と不安しかありませんでした。なんなら「どうしてやろうと言っちゃったんだろう」という後悔すらありました。
実際にステージに立った時の気持ちは?たくさん出演者もいた中でほぼトリともいえる、最後のほうでしたよね。
とても大きく素敵な会場で、ここに自分が立てるということが信じられませんでした。ただ当日は勝手が分らず、また出演順も教えてもらえなかったので、控室でただ石のように座っていました。
ステージに上がるときは緊張で手が震えていましたが、大入満員の会場で立てたことは、dream come trueでした!
観客の反応で印象に残った瞬間はありましたか?
なによりも自分のジョークで笑ってもらったとき、本当に嬉しかったです!また終演後に、コミック(出演者)やお客様から「good job!」「great!」と声をかけてもらい握手をしたのは、一生忘れられない経験です。
この体験を通じて、自分自身にどんな変化がありましたか?
何歳からでも挑戦はできると改めて感じました。ただ一番感じたのは、僕一人の力では、ステージに立つことはできなかった、という感覚です。小池さんはじめ多くの方の協力があってこそのステージなので、感謝の気持ちが大きいです。そして僕も、自分のできることで、誰かのお役に立ちたいなと強く感じました。
同世代やこれからコメディーに挑む若い人たちへ伝えたいことは?
ありきたりにいえば「挑戦はいつでもできる」「挑戦してみれば違う世界が見える」ということで、それももちろんですが、一番伝えたいのは、人のつながりです。自分が何かに挑戦したいなら、その道にたけた人とつながるのが重要だと、今回本当に思いました。オンラインの時代になったからこそ、新しい挑戦をはじめるのであれば、人とのつながりを大切にして欲しいです。
今後、またアメリカでスタンダップコメディーに挑戦したいと思いますか?それとも別の夢がありますか?
またアメリカで、すべて自分のネタで、スタンダップコメディーに挑戦したいです。そのためには英語をもっとやらなくてはいけないので、気合い入りました。そのあと自分が日本で講師として広めているコミュニケーションスキルを、アメリカでも伝えることができたら最高です!
【プロフィール】
岸 正龍(きしせいりゅう)一般社団法人日本マインドリーディング協会理事、行動心理士、アイウェアブランド「モンキーフリップ」代表兼デザイナー。名古屋を拠点に、心理学と独自のデザイン戦略を融合させたマーケティングで全国にファンを持つブランドを築く。講演・執筆活動も多数。

- ベイリー弘恵
NY移住後にITの仕事につきアメリカ永住権を取得。趣味として始めたホームページ「ハーレム日記」が人気となり出版、ITサポートの仕事を続けながら、ライターとして日本の雑誌や新聞、ウェブほか、メディアにも投稿。NY1page.com LLC代表としてNYで活躍する日本人アーティストをサポートするためのサイトを運営している。
NY在住の日本人エンターテイナーを応援するサイト:NY1page.com