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魅惑の摩天楼、香港フォト通信

マリエ|香港

ニューズウイーク日本版YouTube動画「日本の大学を目指す中国人が激増中......カンニング、裏口入学も横行?」を見て思い出したこと

子どもを海外の大学に行かせたい香港の親は多い(筆者撮影)

ニューズウイーク日本版のYouTube動画があることを最近知った。

「中国人が日本の入試で不正?」というタイトルが目に入ったので、さっそく見てみた。

最後の編集長の「目的のためには手段が正当化される、最小のコストで最大の利益を得たい価値観があって、そこがカンニングとか不正とかに繋がっているのかなというところもあります。そこが日本人の価値観と合わないところに齟齬が生じているんじゃないかなと思う所ではあります」という言葉を聞きながらある事を思い出したので書いておこうと思う。

香港はインターナショナルスクールが充実していて子どもを海外の大学に行かせたい親は多い。一番人気の留学先はイギリスである。娘もイギリス系インターからイギリスの大学へと行った。

イギリスの大学に入る第一関門GCSEの試験で講じている事

イギリスの大学に入るにはざっくり言うと10年生(Year 10)、11年生(Year 11)の2年間に科目を選択して11年生の終わりにイギリスの高校卒業のレベルを満たしていると証明するGCSEと言う試験を数週間にわたって受けることになっている。

試験はイギリスでのGCSE試験の開始時間に全世界同時でスタートする

イギリスが午前9時に試験がスタートだとしたら香港は夕方の5時から、日本だと午後6時開始、オーストラリアだと夜の7時から。時差で国によっては真夜中のスタートもあるし早朝4時開始なんて国もある事だろう。

各国それぞれ午前中の開始にしたらイギリス側の試験が終わったころには瞬時に試験内容が飛び交ってしまう。試験の教室に入る前にはスマホ、スマートウオッチ押収、耳の穴の中に通信機器をかくしてないかなどのチェックを経て入室。各教室5~6人のイギリス人の先生が動員され、試験中に先生たちは生徒をにらみつけるように一人一人をチェック。見張りの先生と目と目が合おうものなら『今の不自然な行動は何?』と怒られた子もいたという。もちろん試験の時間が終了するまで全員教室を出ることは許されない。早く終わって出てしまった子が電子機器を使って悪さをするのを防ぐためである。要は過去に不正が起こったから、騙された学校側は策を講じる! これに尽きるのである。

イギリスの大学入学で大きな比重を占めるパーソナルステートメントで講じられている策

GCSEが終ると第二関門が始まる、12年生(Year 12)、最終学年の13年生(Year 13)の2年間、IB(インターナショナルバカロレア)が始まる。ざっくり言うと世界中の大学へのチケットを手に入れるため、科目を選んで2年間勉強する。2年間かけて自分が選択した科目の勉強の総合評価点が出て、その点数でイギリスで受け入れてくれる大学を探す(日本のような一発テストではない)。ここで良い総合点が出たからと言って喜んではいけない。もう一つものすごく大きな比重を占める物がある。パーソナルステートメント(Personal Statement)と呼ばれるものである。

パーソナルステートメントとは「なんでお宅の大学に入りたいか」について書くレポート。これに失敗すると教科の点数が良くても必ず取り消しにされる。そのぐらい大事なのである。

昨今過去に書かれたパーソナルステートメントがネットに上がっている。でもそれを見て手を加えてちょっと変えてパクろうとしても必ずばれるようになっている。ばれる理由とは以下の通り。

▼ある人物が過去に書いた他人のレポートを真似て自分らしさを加味して書いても『この人物の書いたレポートは過去に誰誰さんが書いたレポートを●パーセントの確立で模倣しています』と瞬時にたたき出すソフトをイギリスの全大学側が共有しているから。

▼この人間がずるをしてますよ、と言う情報はイギリスにある全大学がネットワークでつながって共有する為、この大学でパーソナルステートメントがはじかれたから違う大学でやってみるかという手は通用しない仕組みになっている。

徹底しているなと当時思ったものだ。

週刊スパで大反響があったという「早稲田大の入試だけじゃない、日本語能力試験でカンニングが横行。試験開始15分後に解答が送信される『手口』」なんて記事も見つけたので、ついでに読んでみた。

リンク先 → https://nikkan-spa.jp/2000839/2

本当にわきが甘いんだなあと思った。

どの国籍の生徒が日本の大学入試で一番不正を働くかの公式な統計はない。日本人だってカンニングするでしょう?といきり立つ人もいる。そりゃそうだ日本人だってカンニングをする人はいる。でも国別で受験者数に対してのカンニング、不正の比率のデータを学校側は持ってほしい。比率の側面でどこの国が抜きんでているかのデータはエビデンスとして蓄えておくべきだと思うのだけれど。

 

Profile

著者プロフィール
マリエ

香港在住の雑貨が大好きなフォトグラファー。大学卒業後、自動車会社、政府機関、外資企業にて広報担当。夫の転勤で香港に移住後、カメラに興味を持ち、日本人、外国人フォトグラファーに師事。現在、雑貨を可愛く撮るカメラ教室「Zakka Styling」を主宰。同時に家族写真、ロケーションフォトの依頼もこなす日々。インスタグラムはこちら

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