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ラッシャー貴子|イギリス

時を隔ててロンドンで出会った音楽のレジェンド2人、ヘンデル・ヘンドリックス・ハウス

入り口裏に掲げられた看板。博物館があるメイフェア地区はハイブランドの店や高級住宅が立ち並び、繁華街も徒歩圏内という一等地だ。筆者撮影

ロンドン市内にヘンデル・ヘンドリックス・ハウスというこぢんまりした博物館がある。ヘンデルとヘンドリックスとはもちろん、バロック音楽を代表する作曲家ヘンデルと、伝説のギタリスト、ジミヘンことジミ・ヘンドリックスのことだ。著名な音楽家という以外に接点のなさそうな2人の名前がどうして一緒に? と思うでしょう。実はこの2人、時を隔ててロンドンで隣の家に住んでいたのだ。このレジェンドたちの音楽や生涯を紹介するこの博物館では、彼らが実際に暮らした部屋を公開している。

2人の住まいがあったのは、ロンドンの一等地、メイフェア地区のブルック・ストリートだ。ヘンデルは18世紀に25番地の家に暮らし、ヘンドリックスは隣の23番地の部屋を1960年代に借りていた。こんなに唐突な組み合わせの2人が隣りあって生活した歴史があることも、それをおもしろがって一緒に展示しようという行為も英国らしく思える。

ヘンデル・ヘンドリックス・ハウスのインスタグラム投稿より、ヘンデル・ヘンドリックス・ハウスの外観。ジョージアン様式のタウンハウスだ。1階が店舗になっている角の建物がヘンドリックスが部屋を借りた23番地、隣のグレーの建物がヘンデル邸だった25番地。

ゲオルグ・フリードリヒ・ヘンデルは、1685年、ドイツで生まれた。若くして音楽の才能をあらわし、招待を受けて25歳で英国に渡った彼は、王室に取り立てられて作曲家として大成功を収め、今の時代にも演奏されることが多い。クラシック音楽になじみがなくても、ヘンデルの名前を知らなくても、合唱の『ハレルヤ・コーラス』や表彰式でよく使われる『見よ、勇者は帰る』には聞き覚えがあるだろう。

ヘンデルはこのブルック・ストリート25番地の家を1723年に新築で購入した。家を買ったのは初めてのことで、ツアーで旅に出るとき以外はほとんどここで過ごし、作曲やリハーサルもここで行った。代表作のオラトリオ『メサイヤ』や、今も英国の戴冠式で演奏され続ける『司祭ザドク』はじめ、数多くの作品がこの家で生み出されている。のちに英国籍も取得したヘンデルは、74歳で亡くなるまで36年間ここで暮らした。

ヘンデルがこの世を去った約200年後、1942年にアメリカのシアトルでジミ・ヘンドリックスが生まれた。兵役を終えた後にバンド活動を始めると、たちまち関係者の目に止まり、英国人のマネージャーに招かれて1966年に渡英した。その後、超絶のギターテクニックとギターを燃やしたりする過激なステージパフォーマンスで、またたく間にスターダムにのし上がった。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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