England Swings!
自然の中の知的エンターテイメント、The Newt in Somersetの庭を歩く
夏休みに、サマセット州の友人夫妻の家に遊びに行ってきた。ロンドンから西に車で3時間、電車で2時間ほどの距離で、イングランドらしい豊かな緑が広がるカントリーサイドだ。けれど最近ではモダンなギャラリーができたりセレブがロンドンから移住したりして、第二のコッツウォルズになるかも? と静かな話題を呼んでもいる。
ファームハウスをセンスよく改装したお宅に泊めてもらってくつろぎ、翌日は、花や野菜を大切に育てる友人おすすめのホテルの庭を見に出かけた。
そのホテルの名はThe Newt in Somerset(ザ・ニュート・イン・サマセット、以下「ザ・ニュート」)。2019年の開業翌年から数々の賞を獲得して、コンデナスト・トラベラーのゴールドリスト、世界ベストホテル50の第37位、サンデータイムズ紙のイングランド南西部のベストホテル、ブティックホテル・トップ50第1位などに輝いて、いま大注目されている。
素朴なカントリー調とモダンな雰囲気をあわせ持つこのラグジュアリーなホテルには宿泊者しか入れないけれど、その広い庭は誰でも見学することができる(入場料あり)。この庭は、ホテル開業前から約200年という時間をかけてさまざまな手で作られてきたものだ。今はそこにザ・ニュートらしさが加えられ、21世紀のわたしたちを楽しませてくれる。
ザ・ニュートの庭の魅力はまず何と言っても、文字通り、見渡す限りに広がる広大な敷地だ。面積は800エーカー(東京ドーム約87個分だそう!)と、世界遺産であるキュー王立植物園の500エーカーよりぐっと大きい。しかも地元情報に詳しい友人によれば、今も周辺に広がっているようだ。途中、国道の下をトンネルのようにくぐるところがあって、愉快な気持ちになった。国道をまたぐ庭なのだ。
園内には、さまざまな種類の庭園が配置されていてとにかく飽きない。同系色ごとにまとめられたカラーガーデン、300種以上のリンゴの木を巨大な迷路のように並べたバロック式庭園、それとまた別の広大なリンゴ畑、花も咲いてかわいらしい野菜畑、枯山水風に石が敷かれた日本式庭園、子だくさんの庭師が住んでいた家の周りに広がるコテージガーデン、パリの公園を感じさせるエリア、ガラスに包まれた温室、森にいるかのように自然が残るエリア(鹿にも出会いました)、今年オープンしたばかりのかっちりしたフォーマルガーデン、水鳥がくつろぐ池などなど。友人によれば、季節に合わせて花もよく入れ替わるので、訪れるたびに楽しめるそうだ。
どこもセンスよく作られていて手入れが行き届き、その美しさに口元がほころんでしまう。細部にもこだわって、ちょっとした柵にも、切りっぱなしの材木ではなく、木の幹を縦に割ったものを使っている。ホテルの名前になっているニュート(イモリ)をかたどったオブジェが時々ひょっこり現れて、まるで不意にウィンクされた気分になるのだけど、ニュートの形をした大きな池の遊び心には驚いた。ドローンを飛ばさないとはっきり見えないだなんて、なんともしゃれているではないですか。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile