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ラッシャー貴子|イギリス

自然の中の知的エンターテイメント、The Newt in Somersetの庭を歩く

ローマン・ヴィラは、ローマ帝国がこの地方を支配していた約1700年前の住居を再現したものだ。まずは隣接の博物館でテクノロジーを駆使した楽しい展示を見る。発掘や再現に関わった考古学者、建築家、職人たちが、「苦労もあったけど夢が叶ったようだ」と嬉しそうに話す動画がとても印象に残った。

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発掘された遺跡の真上に建つ博物館はモダンな造り。ガラス越しに遺跡(の一部)の上を歩けるようになっている。大きな窓の向こうには再現されたローマン・ヴィラが見える。ヴィラの周りに植えられたブドウの木も大きく育っていた。ローマ帝国よろしく、ここでワインを作るのかな。写真©S. Lewis

念のためはっきりさせておくと、再現されたヴィラは展示用ではない。訪問者は自分の足で中を歩くことができる。説明してくれるスタッフはいるものの、ガイドが付くわけではないので、ただ自由に見て回るのだ。特別な歴史好きでないわたしも、これには大いにわくわくしてしまった。

モザイクやフラスコ画も職人の手で再現されていて、どの部屋も想像以上にカラフルだった。人が住んでいるように演出された台所や寝室、『テルマエ・ロマエ』を思い出す大きな風呂場、宴が開かれた居間、ハーブが植った庭など興味津々で見入った。ローマの衣装に身を包んだスタッフが通り過ぎるのも楽しかった。

2年前のオープン時のYouTube動画。イベント責任者がローマン・ヴィラを案内してくれる。一緒に中に入るつもりでどうぞ。ちなみにヴィラ近くに設置されたトイレはローマ式で、なんと大理石製だった。歴史を実際に経験できるのもおもしろい。

ローマン・ヴィラでは最新テクノロジーも採用されていて、古代ローマとのギャップもおもしろい。博物館で渡されるヘッドフォンはGPSを搭載しているので、どこを歩いても目の前の展示に合わせて説明や音楽が流れてくる。ヴィラでも一人ずつVRゴーグルが渡されて、この場所で撮影された当時の主人一家と使用人たちの暮らしぶりを観ることができる(日本語版もあった)。動画は部屋の全方向を映しているので、回転椅子を自分のペースでくるくるしながら観た。

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ヴィラの裏に当時の食べものを売っていたので、レバーのミートボールとチーズ、豆のシチュー(たくあんのようなピクルス添え)、フラットブレッドなどを食べてみた。特にシチューはハーブやスパイスが効いていて想像以上の美味しさ。飲みものはここで作られたリンゴジュース。写真©S. Lewis

ザ・ニュートでは飲食と買い物以外は入場料に含まれるので、どの展示も無料だ(一部は予約が必要)。入場はザ・ニュートの会員か会員に同伴するゲストに限られるものの、誰でもその場で会員になることができる。年会費は最低で80ポンド(約1万6000円)、会員は1年間入場無料、ゲストは毎回1人20ポンド(約4000円)。英国の物価では特別に高いというわけではない。

歩きながら友人たちと、「このホテル、いいお金の使い方をしてるね」と話し合った。ホテルと庭を作ったことで、大きな産業のない地域に雇用が生まれ、お金をかけたエンターテイメントで多くの人を楽しませている。歴史的価値のあるローマン・ヴィラの再現は社会貢献にもなっているだろうし、その過程では考古学者たちも喜ばせていた。みんながハッピーだ。

帰り道には向こうの方に何か新しい建物を建てているのが見えた。次は何を見せてくれるだろう。ザ・ニュートの庭、今度は違う季節に行ってみたい。

 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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