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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

ジューンブライドは孫娘

準備が整った披露宴会場。古い納屋をきれいに改装した、ぬくもりを感じる空間だった。筆者撮影

日本で梅雨のイメージが強い6月は、英国では美しい季節だ。ふだんは気まぐれな天気もこの時期は(まあまあ)安定しているし、夏至も近づいて夜は9時を過ぎてもまだほんのり明るい。太陽がさんさんと降り注いでもまだ暑すぎもしないし、タンクトップ姿、サンドレス姿であふれた町はどこかうきうきしている。今年はなかなか気温が上がらず、どうも調子が出なかったけれど。

6月の花嫁、ジューンブライドは幸せになるという言い伝えがある。その理由には、英語June(6月)の語源にもなっているローマ神話の女神ユノ(Juno)が結婚や出産の守護神だからとか、昔は3月から5月の農繁期に結婚が禁じられたから6月は結婚ラッシュだったからなど諸説あるようだ。でもヨーロッパに暮らしていると、気持ちのよい季節の影響は大きかったはずと思わずにいられない。本人たちも祝う方も気分がよくて、いかにも幸先がよいじゃないですか。

わが家も先日、夫の孫娘の結婚式に行ってきた。えー、そんなに大きなお孫さん! と驚かれるけれど、ずいぶん年上の夫は最初の結婚が早かったのだ。夫と結婚したばかりの頃に、「これがおばあちゃん」と友だちに紹介された時はむむむ?? となったけれど、「違うの? じゃあタカコはわたしの何?」と訊いてきたまっすぐな目にヤラれた。今では、自分の子どももいないのに自動的におばあちゃんになれた! と得意になっている。

newsweekjp_20240626125730.jpeg記念撮影を横からパチリ。友達の多いこの二人には、男女の付き添い役であるアッシャーとブライド・メイドがそれぞれ7人もいた。男性はお揃いのツイードのスリーピース、女の子たちのドレスはさわやかな色の同じ生地でデザインを少しずつ変えて個性を見せていた(これが最近の流行らしい)。筆者撮影

英国に来て、正式な結婚には役所での挙式が必須と知って驚いた。もちろん教会や寺院で式をするのは自由だけれど、それとは別に、登記官と立会人(自分で選ぶ)の前で結婚を誓い、法的な書類に署名する、民事婚の式が必須なのだ。言ってみれば「役所での入籍の儀式」のようなものだ。ここでは結婚の手続きは紙一枚というわけにはいかない。

役所と教会で二度挙式するカップルも多いけれど、孫娘たちは披露宴を開くイベントスペースで民事婚の式だけを挙げた。役所から認可を得ている会場には、登記官が出張してきてくれるのだ。

民事婚の式は宗教色がないだけで、教会での結婚式とかなり似ている。花婿が待つところに花嫁が登場して結婚を誓い、指輪を交換してキス。誓いの言葉も「神の名のもとに」と言わないだけでほぼ同じだけれど、「これであなたは結婚の契約を結ぶことになります」という文言が入るところに西洋を感じる。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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