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ラッシャー貴子|イギリス

自然の中の知的エンターテイメント、The Newt in Somersetの庭を歩く

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野菜畑の近く。ウリやカボチャを大きな実ごとアーチにからませるという、想像もつかない見せ方に心躍った。季節によって、訪問客に実が落ちないようにネットを被せたり、春の花やリンゴの実(!)で飾ったりするそうだ。写真©S. Lewis

畑で採れた野菜は新鮮なうちにホテルのレストランで使われ、庭に併設されたファームショップでも売られる。ショップにはリンゴ園の収穫を園内で瓶詰めしたジュース(美味しかった!)やリンゴ酒、オーナーの出身地である南アフリカのワイン、肉類、チーズ、クロワッサンとマフィンを合体させたクルフィン(これも美味しかった!)、日用品や書籍などが美しくディスプレイされている。

自然の中のアクティビティも充実している。ガーデニングを学べるのはもちろん、石を積み上げたり小枝を紡いだりする昔ながらの塀の作り方を習うワークショップや子どもが自然に触れあうクラスもあった。園内に食べものは持ち込めないものの、休憩するカフェも多く、緑の中の本格的なレストランもある。中で買った食べものでピクニックすることもできる。

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散策中に出会った馬車。何度も来ている友人も初めて見たそう。園内はとにかく広いので、必要ならゴルフのバギーのような車も貸りられるけれど、この馬車は特別の移動手段のようだ。園内のあちこちで伝統も演出されている。写真©S. Lewis

とはいえ、今どきは気の利いたことをするガーデンは多く、このくらいでは特別とは言い切れない。でも、ザ・ニュートは何かが違う。手間とお金をかけてスタイリッシュに作られていること、遊び心にあふれていることはわかるけれど、他は何だろう。歩きながら友人たちと知恵を寄せ合った。そして出てきたキーワードが、「知的エンターテイメント」だった。

庭園の作り方、見せ方が斬新だったりユニークだったりして、ガーデニングに詳しい友人も毎回のように刺激を受けるという。それなのに情報量は多過ぎず、学術的にもなり過ぎず、気楽で楽しい。豊かな自然に浸りつつ、最新の技術や洗練されたデザインに触れることもできる。そのすべてが融合して、大人も大満足のアミューズメントパークのようになっている。

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地上(たぶん)15メートルぐらいにある橋では、森の空中散歩をする気分に浸れる。歩くと軽く揺れるので、自然の中で童心に返った男子陣がわざわざ飛び跳ねて怖がらせてくれた。何気ないようだけれど、周りの木は橋の高さから下の枝が落とされていて、縦の線と高さが強調されているように感じた。写真©S. Lewis

知的エンターテイメントの最たるものは、園内に用意された展示だろう。世界各地の庭園を紹介するストーリー・オブ・ガーデニング、蜂の生態や蜂蜜作りを紹介するビーザンチウム(この日は行かれなかった)、ローマ帝国支配時代の家を再現したローマン・ヴィラなどがあり、大人の好奇心がくすぐられる。特にローマン・ヴィラは、ザ・ニュートの大きな魅力である「お金をかけて楽しませてくれる」を体現している場所だ。たまたま敷地内で遺跡が見つかって始まったプロジェクトとはいえ、私有地に歴史的価値のある建物を建ててしまうなんて!

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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