Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア
無敵の王者 井上尚弥選手の防衛戦相手、豪の無敗挑戦者 サム・グッドマン
WBA世界バンタム級王者であり、世界3階級制覇王者のプロボクサー 井上尚弥選手の次の防衛戦は、12月24日に東京の有明アリーナで開催が予定されているサム・グッドマン戦だ。
私自身、父の影響で幼い頃からボクシングを見ていたこともあって、井上尚弥選手については以前から知っていたし、過去の試合もいくつか見てきていたので、今年の年末に防衛戦を行うことは知っていた。
だが、対戦相手がオーストラリア人選手だと知ったのは、つい最近のこと(約1ヶ月前)。シドニーの北約80kmに位置するゴスフォードでトレーニングをしているというその対戦相手にインタビューするドキュメンタリー番組の取材をお手伝いすることになったのがきっかけで、サム・グッドマンというこの国のプロボクサーを知ったのだ。
サム・グッドマン選手は、ニューサウスウェールズ州出身の26歳。WBOオリエンタルスーパーバンタム級王者であり、IBFインターコンチネンタルスーパーバンタム級王者でもある。プロキャリアは、19戦 19勝 (8KO) と無敗を誇り、5月に行われた井上尚弥選手の対ドヘニー戦の試合後、リング上に呼ばれて次の防衛戦の指名挑戦者となった。19戦全勝だが、そのすべての試合はオーストラリア国内で行われており、今回の井上戦が彼にとって初の海外試合となる。
サムは、オーストラリア国内をはじめ英語圏の国々では「サミー(サムの愛称)・ザ・ゴース」と呼ばれている。インタビューを担当した者によると、なぜ『ゴースト』と呼ばれるのかは、サム本人も「わからない」と笑っていたそうだ。
見かけは、オーストラリアのその辺にいる気のいい兄(あん)ちゃん。しかし、内に秘めた闘志は凄まじい。試合がクリスマス・イブに行われることから、「自分がサム(サン)タクロースになってオーストラリアとオーストラリア人のためにプレゼント(ベルト)を持ち帰る。彼(尚弥)は(ベルトを)取り返しにオーストラリアに来ることになるだろう」と意気込んでいたほどだ。また、彼は、自身の応援団のために100人分のチケット(約550万円)を自腹で購入し、この試合に臨んでいたという。(参照)
ところが、本日(12月14日)、衝撃的なニュースが飛び込んできた。それは、サムが試合前最後のスパーリングで左目の上を負傷。明日の15日に日本へ向けて出発する予定だったが、試合の開催そのものが難しくなってしまった...
Disaster. Sam Goodman has been cut over the eye in his final spar before the undisputed fight with Naoya Inoue. Goodman camp now pushing for a delay to scheduled Christmas Eve fight in Tokyo. Goodman was set to fly out tomorrow #InoueGoodman pic.twitter.com/cdq6UpIMI8
-- Ben Damon (@ben_damon) December 14, 2024
グッドマン陣営は、試合の延期を申し入れ、それを受けて、延期を快く受け入れてくれた井上選手が自身のXを更新。負傷の報が流れてからはヤキモキしていたが、井上選手の懐の深さに感謝すると共に、サムの挑戦が無駄にならずに済んでよかったとちょっと安堵した。
10日後に迫っていた12月24日の防衛戦は、グッドマンのスパーリング中の怪我により延期する事になりました。
-- 井上尚弥 Naoya Inoue (@naoyainoue_410) December 14, 2024
楽しみにしてくれてた方々には申し訳ないです。
また新日程で足を運んで頂ければ嬉しいです!!!
新日程:1月24日(金)有明アリーナ
お互い最高の状態で闘おう#井上尚弥#INOUEGOODMAN pic.twitter.com/RVLACuA9FF
試合の日程は、来年1月24日へ変更され、会場はそのまま有明アリーナとなるそうだ。
Sam Goodman's world-title bout vs Naoyo Inoue has been rescheduled due to an injury Goodman sustained during sparring.
-- bet365 AUS (@bet365_aus) December 14, 2024
January 24, 2025
Ariake Arena, Tokyo#InoueGoodman pic.twitter.com/YcSgpIpcSb
これまでの井上尚弥選手の試合はすべて、(もちろん)井上選手を全面的に応援してきたが、サムのひたむきなトレーニングの様子を見聞きしてからというもの、彼にも頑張ってほしい、勝たせてあげたいという気持ちがふつふつと湧いてきて、今も複雑な心境の中で揺れている。もちろん、井上選手にタイトル防衛して欲しい気持ちも捨てきれないし、下馬評ではサムが完全に不利な立場に置かれていることは承知しているが、善戦を期待せずにはいられない。
クリスマスのサンタは叶わなくなってしまったけれど、1ヶ月後、両選手共にベストな状態で戦い、人々の記憶に残る素晴らしい試合を見せてくれることだろう。どっちもがんばれ!〈了〉
▼井上尚弥 公式サイト
▼サム・グッドマン 公式インスタグラム
▼NTTドコモ Presents Lemino BOXING 井上尚弥 vs サム・グッドマン
著者プロフィール
- 平野美紀
6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。
Twitter:@mikihirano
個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/
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