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ヴィズマーラ恵子|イタリア

メローニ首相のCpac演説に見る保守政治の未来

Sky TG24 公式YouTubeチャンネルより

ジョルジャ・メローニ首相は、2025年2月22日に開催されたアメリカの保守派政治活動会議(CPAC)にビデオ出演し、イタリアとアメリカの結びつき、そして欧米同盟の重要性について力強い演説を行った。
米国保守派政治活動会議(CPAC)は、アメリカを代表する保守派の集会であり、世界中から保守的な思想を持つ指導者が集まる場である。
メローニ首相がこの重要な会議で発言したことは、単にイタリア国内の問題を語るだけでなく、保守主義の価値観が国際的に広がりつつあることを示し、世界的な保守派政治の潮流においてイタリアの未来に対するビジョンを明確にして、イタリアの位置を確認することでもあったと思える。
メローニ首相は、欧米保守派の価値観や理念を再確認し、さらなる連携を呼びかけた。その内容を深く掘り下げて考えると、欧米保守派の今後の政治的未来を垣間見ることができる。

| 保守派の理念と価値観の強調

欧米の保守派としてのメローニ首相の位置づけ

メローニ首相のCpacでの演説の最大の特徴は、欧米に共通する保守派の理念と価値観を強調した点である。
彼女は演説の中で、「我々の敵は、トランプ大統領が我々から離れることを望んでいる。しかし、彼を強力で効果的なリーダーとして知る私は、彼を信じている」と語り、アメリカとヨーロッパの保守派が一体となって戦うべきだと訴えた。
この発言からは、彼女が持つ深い国際的視野が感じ取れる。

彼女は単にイタリアの利益だけを考えるのではなく、西洋文明全体の未来を守るために戦っているのだ。
メローニ首相が強調した価値観とは、自由、民主主義、そして自国のアイデンティティを守ることだ。

彼女は、「西洋にはアメリカとヨーロッパが不可欠であり、どちらが欠けても成り立たない」と繰り返し強調した。
これは、彼女が国際的な政治舞台でのリーダーシップを発揮する際の基本的な立場であり、アメリカとヨーロッパが協力して直面するべき課題について、強い意志を示している。
メローニ首相は、演説の中で欧米の保守派としての立場を鮮明にした。
彼女は、「保守派はただ一国の問題にとどまらず、西洋全体の価値観を守るために戦っている」と述べ、保守派がグローバルな影響力を持つことの重要性を強調し、ただイタリア国内での影響力を強化しようとしているのではなく、欧米の保守派として、世界的な舞台でのリーダーシップを果たす決意を示すものだ。

また、メローニ首相は、「欧米の保守派が力を合わせることで、世界の秩序を守ることができる」と述べ、西洋文明を守るための協力の必要性を訴えた。
この考え方は、彼女が保守派としての役割を果たす上での基本的な価値観を示している。彼女のビジョンは、グローバルな保守派の連携を強化することにある。

| ウクライナ問題とリーダーシップ

演説の中で、メローニはウクライナの戦争に触れ、その問題の重要性を強調した。

「ウクライナは自由を守るために戦っている」と彼女は述べ、ウクライナへの支援を続けるべきだと主張した。
この発言は、メローニが保守派としての理念を守りつつ、国際的な責任を果たす姿勢を示している。
ウクライナ戦争をめぐる議論が続く中で、彼女が「強いリーダーシップが必要だ」と語ったことは、彼女自身の政治的リーダーシップを強調する重要な一言となった。

ウクライナ問題に関しては、メローニ首相は「平和を築くためには、強いリーダーシップが求められる」と述べた。
単に戦争を終わらせるだけではなく、戦後の世界秩序をいかに築いていくかという問題に焦点を当てた言葉だろう。
彼女は、「平和は、全員の協力によって築かれるべきだ」と語り、ヨーロッパとアメリカが一丸となってウクライナの自由と領土保全を守るべきだと強調した。
この考え方は、彼女が国際政治における積極的な役割を果たす決意を示すものであり、将来的に欧州とアメリカの連携がどれほど重要かを物語っているのではないだろうか。


| 国際的な影響力と保守派グローバルネットワークの拡大

メローニ首相は、保守派のグローバルネットワークがますます拡大していることにも触れた。

彼女は、「保守派は世界中で協力し合い、強い影響力を発揮している」と述べ、保守派の理念が国境を越えて広がっていることを強調した。
これは、1990年代にビル・クリントンやトニー・ブレアが創設したリベラルなグローバルネットワークに対抗する形で、保守派が団結し始めたことを意味している。

このような保守派のグローバルネットワークは、単なる政治的な連携にとどまらず、文化的な価値観の共有にも大きな意味を持つのだ。
保守派が共有する価値観、例えば家族や伝統、国家の主権を守ることが、今後ますます多くの国々で支持を集めることだろう。
メローニ首相は、こうした保守派の理念が国際的に影響力を持つことを強調し、左翼の反発にも関わらず、保守派がグローバルな政治潮流の中心となりつつあることを伝えていた。

アメリカのドナルド・トランプ前大統領やフランスのマリーヌ・ルペン氏といった他の保守派リーダーとの関係も深めており、保守主義を軸にした国際的な政治同盟を作り上げつつある。
2025年2月に行った今回のCpacでの演説もその一環であり、彼女は「家族の価値観」や「国家主権の保護」を強調し、イタリアが国際的に保守派政治の重要なプレイヤーであることを確認した。
彼女のリーダーシップは、ヨーロッパ全体の保守派勢力を結集させる動きへとつながり、EU内での保守派の影響力拡大にも貢献している。

コリエーレ・デラ・セラの公式YouTubeチャンネル「2025年2月22日、アメリカ・CPACでのジョルジャ・メローニ首相の演説」より

| メローニ首相の政治的立場と背景

メローニ首相は、2018年に設立された右派政党「イタリアの兄弟(Fratelli d'Italia)」の党首であり、イタリアの初の女性首相としてその地位を確立した。彼女の政治的立場は、保守主義を基盤としており、特に国家主権、移民に対する厳格な立場、伝統的家族観の維持などを重視している。そのため、彼女の政治スタンスは、保守派からは強く支持されている一方で、進歩的な立場を取る勢力からは批判を受けている。

メローニ首相がCpacに参加したことについては、国内外で様々な反応があった。
イタリアの左派や一部の野党は、メローニ首相が極端な保守派と連携を深めていることを批判しており、特にフランスの「ラシオン・ナショナル(Rassemblement National)」党のジョルダン・バルデラ氏がCpacでの演説を辞退したことを引き合いに出し、彼女の立場を疑問視する声も上がった。

一方で、イタリアの右派勢力からは、メローニ首相の参加は非常に重要であり、彼女が欧米の保守派を結集させる重要な役割を果たしているとの評価もあった。例えば、「アツィオーネ(Azione)」党のカルロ・カレンダ党首は、「メローニには素晴らしいチャンスがある。彼女は、欧州においてトランプと対峙し、関税やウクライナ問題に関する立場を強化するべきだ」と述べ、メローニ首相のCpac参加を支持している。

また、メローニ首相の支持者である「イタリアの兄弟(Fratelli d'Italia)」党のアントニオ・ジョルダーノ氏は、「メローニの演説は素晴らしかった」と評価し、国内外の批判を一蹴した。彼は、「左派は何も具体的な提案をしないまま、単に口論を続けている」と批判し、メローニ首相が示す保守的なビジョンこそがイタリアの未来にとって最も重要だと訴えた。

彼女が首相として掲げる政策は、イタリア国内における経済改革や社会改革を含んでおり、特にイタリア社会の「家族観」や「伝統」を守るという視点を中心に据えている。
メローニ首相は、イタリアがグローバル化と移民の流入に直面する中で、伝統的な価値観を守ることが不可欠であると主張している。この点に関しては、彼女のリーダーシップは、現代の保守派政治における象徴的な存在となっている。


| メローニ首相の「プロパガンダ」への反論

メローニ首相は、Cpacでの演説の中で特に「プロパガンダ」について言及した。
彼女は、メインストリームメディアが自身の政策や政治姿勢を誤って報道していることを批判し、「我々がイタリアを孤立させ、世界の地図から消し去る、投資家を遠ざけ、自由を抑圧するという物語は嘘だ」と断言した。
メローニ首相が指摘した「プロパガンダ」は、彼女やイタリアの右派勢力に対する誤解や偏見に基づいた報道を指し、これに対する反論であった。

メローニ首相がこのような言及をした背景には、保守派が現代社会で直面するメディアとの対立がある。
保守派の政策がよく「反自由」や「閉鎖的」として描かれる中で、彼女はその真逆を証明するかのように、保守的な政策が実際にイタリア社会においてポジティブな影響をもたらしていることを強調した。
イタリア経済は、メローニ政権下で着実に回復し、失業率も過去最低に近づいた。

移民の不法流入は60%減少したというデータも、彼女の政策の効果を物語っている。
彼女の政策は確実に成果を上げている。特に、移民問題については彼女の強い立場が功を奏しており、イタリア国内での保守的な意識を高める一因となっていると言える。

| イタリア外の批判と支持

メローニ首相のCpac参加に対する反応は、国内外で分かれている。
国内では、左派勢力や一部の野党から彼女が極端な保守派と連携を深めていることを批判する声が上がった。
特に、フランスの「ラシオン・ナショナル(Rassemblement National)」党のジョルダン・バルデラ氏がCpacでの演説を辞退したことを引き合いに出し、メローニ首相の立場に疑問を呈する意見もあった。

一方、右派勢力からは、メローニ首相が欧米の保守派を結集させる重要な役割を果たしているとの評価もある。メローニ首相が党首を務める「イタリアの同胞(Fratelli d'Italia)」党のアントニオ・ジョルダーノ氏は、「メローニ首相の演説は素晴らしかった」と述べ、国内外の批判に対して強く反論した。彼は、メローニ首相が示す保守的なビジョンこそが、イタリアの未来にとって最も重要だと訴えた。

彼女が提唱した「保守派の団結」は、欧米における保守派政治の再構築を目指すものであり、今後の国際情勢において大きな影響を与える可能性がある。
メローニ首相のリーダーシップは、イタリア国内外で確固たる影響力を持ち続け、保守派の未来を形作る重要な要素となるだろう。
彼女の政策は、イタリア国内での経済改革や社会改革を実現し、保守派の立場を国内外で強化するための重要な指針となっている。メローニ首相が示すリーダーシップは、今後の保守派政治に大きな影響を与え、イタリアが世界的な保守派の中心となる道を切り開いていくと思う。


| 自由の拡大と保守的価値観の調和

メローニ首相が強調した「自由の拡大」という言葉には、経済的自由、社会的自由、そして政治的自由の三つが含まれている。

経済的自由に関しては、税制改革と規制緩和を進め、企業活動を促進する政策を取った。
これで、多くの企業がイタリア市場に投資し、雇用の創出に繋がったのだ。
特に、中小企業の支援策が実を結び、イタリア経済の安定に寄与しているようだ。

社会的自由については、メローニ首相は、保守的な価値観を重んじながらも、多様な社会的選択肢を認める姿勢を示している。
彼女の政策は、個人が自由に選択し、自己実現を達成できる社会を目指しており、家族や伝統的な価値観を尊重しつつ、現代社会の多様性も考慮しているところだ。
このアプローチは、保守派の立場から見ても、社会の調和を維持しながら自由を拡充する方法として評価されている。

政治的自由に関しては、メローニ首相は、自由な議論と意見交換を尊重する姿勢を強調しており、民主主義の強化に貢献している。
イタリア国内では、政権の政策に対する議論や批判が活発に行われており、これがより健全な政治環境を生み出す土壌となっていると思える。


| メローニ首相の政策とイタリアの未来へのビジョン

○経済改革と雇用改善

メローニ首相の掲げる最大の課題の一つは、イタリア経済の回復である。
彼女の就任以来、イタリアのGDP成長率は回復し、2024年には1.2%の成長が予測されている。これは前政権を上回る成果であり、特に若年層の失業率が大幅に低下したことは、彼女の政策が実を結んでいる証である。

税制改革にも力を入れており、特に中小企業の税負担軽減に注力している。彼女の政府は、企業が税務処理を効率的に行えるよう支援するためのデジタル化を推進し、税収の透明性向上を目指しているところである。
これらの取り組みは、イタリアの経済の競争力を強化するための基盤となり、長期的な経済成長に寄与することが期待される。

また、イタリアの失業率は徐々に低下し、特に若年層の失業率が大きな改善を見せている。2023年には、15歳から24歳の失業率は前年比で約4ポイント低下し、若年層の就業状況が好転していることが報告された。
これらの改革は、イタリア経済の競争力を高め、長期的な安定成長を促すための重要な礎である。

○移民政策と国境管理

メローニ首相の最も重要な政策の一つに移民問題があり、その強硬な姿勢に注目が集まっている。イタリアは地中海の南端に位置し、移民の主要な通過点だ。特に、北アフリカからの不法移民が増加する中で、彼女は移民管理の厳格化を推し進めており、イタリア政府は、難民申請の審査を迅速化するとともに、不法移民の取り締まりを強化する方針を打ち出している。
2023年には、不法移民の数が前年比で約60%減少したという実績があり、これは彼女の政策が一定の効果を上げている証だろう。

しかし、この強硬な移民政策には賛否両論があり、メローニ首相は「国家の安全と市民の安全を最優先にし、移民の流入を管理することが国家の義務である」と強調した姿勢に対しては、一定の反発も見られる。
だが、彼女はあくまで国家の義務として移民問題に取り組んでいるところだが、「移民問題を欧州全体で解決すべきだ」と、EU内での協力体制の再構築を呼びかけるなど、国際的な視点を持ちながら対応を進めている。

○社会政策と家族重視

メローニ首相はまた、家族を国家の根幹と考え、社会政策を進めているところだ。
彼女は「家族を守ることこそが国家の根幹を守ることだ」と強調し、家庭向けの支援策を積極的に実施してる。
イタリアは出生率の低下という深刻な問題に直面する中、彼女は子育て支援や教育改革を強化した。
2023年には、子育て世帯への補助金や税額控除の拡充が発表され、育児休暇制度の見直しも進められた。

また、メローニ首相は、女性の社会進出を促進する政策にも注力しており、特に女性の労働市場への参入を支援するための改革を進めている。
女性の労働市場への参入を支援するため、家庭と仕事を両立させやすい社会作りが進められており、これにより女性の労働力参加率は着実に増加している。家庭の経済的な安定も強化されつつあり、これらの施策がイタリア社会の未来を形作る重要な要素となっている。


| イタリアの未来と外交政策

イタリアの外交政策においても、メローニ首相は積極的な役割を果たしている。
ウクライナ戦争への支援を続けつつ、戦争終結に向けた国際的な協力を呼びかけ、NATO内での安全保障の強化を求めている姿勢を貫いている。
彼女は、イタリアが国際社会でより強い影響力を持つべきだと考えており、そのために戦略的な外交政策を展開している。
アメリカやイギリス、ロシアとの関係調整を行いながら、イタリアの国際的な地位を高めることを目指しているのがメローニ首相の外交政策であり、メローニ首相の政治的立場とその影響力は、国内外で確実に強化されているように見える。
彼女の政策はイタリアの経済や社会に大きな変革をもたらし、国際的にも保守主義の価値観を広めるために力を尽くしている。
今後のイタリアがどのように成長していくのか、また、彼女のリーダーシップがどのように国際政治に影響を与えるのか、注視する必要があるだろう。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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