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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツワインのDNA「テロワール」を学ぶ旅 (1) ミッテルライン

ワイナリー「フィリップスミューレ」

ザンクト・ゴアールで2015年まで旧製粉所の跡地だった地域にブドウ栽培を始めたトーマス(画像左)とマルティン・フィリップス兄弟。開始当初0.3ヘクタールだったブドウ畑は現在、6.4ヘクタールまで拡張し、それを機に有機農法に転換して大成功を収めています。

newsweekjp_20240811090012.jpg同ワイナリーのフラグシップはリースリングワインで、「ベスト・オブ・リースリング2024」コンクールでも表彰されています。またNABUスポンサーシップ・アワード2024「土壌を共に良くする」の受賞者の一社に選ばれました。

NABU(自然・生物多様性保全連合)は、この賞で特に持続可能で環境に優しい慣行を特徴とする農場を奨励します。土壌を保護し、生物多様性を促進すると同時に、生態系に適合した農業を可能にするプロジェクトに焦点が当てられています。

試飲したサンクト・ゴアラー・リースリング・フローウィンガート2020は、一部木樽で熟成され、力強さとミネラルを備えています。

ワイナリー「シュラー」

ライン渓谷上流中流域のバッハラッハで、伝統を重んじる小さなワイナリーを100年近く経営しているシュラーワイナリー。ゲロ氏と彼の叔父は2017年、、急斜面にあるブドウ畑を受け継ぐことを決心したそうです。自らワイン栽培を始めたぶどう畑の面積を0.3ヘクタールから3.5ヘクタールに増やし、その92パーセントがリースリング、8パーセントがピノ・ノワールと説明してくれました。

newsweekjp_20240811091620.jpgゲロ氏は2022年、ミッテルラインのワイン(女)王の選挙に立候補し、一躍有名になりました。というのもこの時、初めて男性も投票できるようになったからです。結果は、文頭で紹介しましたユリア・ランブリヒさんが女王の栄冠を得て、ゲロ・シュラーはワイン王子を名乗ることができるようになったという知る人ぞ知る醸造家です。

試飲したワインのひとつブラン・ド・ノワール・ファインヘルプ・シュテーガー・エゼル2023は、果実味豊かで独特の甘みがあり、ファンが多いそうです。リースリング「バッハラッハー・ヴォルフシェーレ・アルテ・レーベン」は非常に飲みやすいワインでした。

ワイナリー「ヨースト」

180年の歴史を持つヨーストワイナリー。現在は7代目セシリアさんがワイナリーを経営しています。ブドウ畑はミッテルラインに12ヘクタールを有し、これに加えてラインガウでも3ヘクタールを栽培しています。

newsweekjp_20240811091656.jpgライン渓谷は急勾配のブドウ畑とスレート崖が特徴です。まるで岩にしがみつくように立つブドウの木は、上質で香り高いリースリングやミネラルたっぷり含んだシュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)を生み出すそうです。

デヴォン・S・リースリング辛口2022は、理想的なリースリングとセシリアさん。確かにエレガンスな心地よい飲み心地です。ドイツワインの価格は、比較的安価でしかも味も素晴らしく、このリースリングも何と12.50ユーロと気軽に買えるのもうれしいです。上質の甘口ワイン「バッハラッハー・リースリング・アウスレーゼ2019」も美味でした。

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次回はワイン生産地ナーへのテロワールについてお伝えします。

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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