ドイツの街角から
ドイツワイン業界の最新トレンド ヴィノテーク建築賞受賞ワイナリーを訪ねて・その1
ビンゲンとボンの間のライン川流域に位置する産地ミッテルラインは、急な坂道、城、宮殿があり、20年以上にわたってユネスコの世界遺産に登録されている絵のように美しい地域として有名である。
ほとんどのブドウ畑が急斜面にあり、栽培の難しい地方として知られる。気候は温暖で晴天の日が多い。ライン川沿いに広がるぶどう畑はリースリングにとって理想的で、栽培面積の65%以上と白ワインのTOPを占める。
白ワインは粘板岩の土壌で栽培され、新鮮さ、ミネラル感、個性を示している。その他の代表的なワインは、シュペートブルグンダー、ミュラー・トゥルガウ。
▽持続可能な仕事をするために規模を縮小「ワイナリーヴァインガルト」
ライン川中流域の町シュパイでは、ワイナリーヴァインガルトを訪問した。18世紀から農業とワイン造りを手がける家族経営のパイオニア。1960年代からワイン造りに専念。1996年よりフロリアン・ヴァインガルト氏と妻ウルリケさんが受け継いだ。
ここでは3年前からワイン畑「イン・デア・ツェッヒ」の麓に木製の試飲小屋を置き、ブドウの木を眺めながら、ワインを味わうことができる。提供最大12名まで収容可能で、居心地が良い。大きなオーク材のテーブルが印象的。
「より少ないことはより多いことをモットーに、家族と自分のために、ブドウ畑の真ん中に新しいワイナリーを建てることを決意した」とフロリアン・ヴァインガルト氏。彼の目標は、「永久に成長し続けることではなく、家業の中で持続可能な仕事をすること」と語る。
ぶどう畑を13ヘクタールから6ヘクタール(うち4.5ヘクタールは所有しワイン造り、残りはリースなど)に縮小した。ヴィノテークはほとんど見えず、ぶどう畑に佇む試飲場所の小屋が唯一の目印。
このワイナリーのユニークな点は、きわめてシンプル。ワインセラーは地中にあり、内部230平方メートルに全技術が収められている。セラーの上の土は少なくとも1.80メートルの厚さがある。また地熱の熱交換器とセラー内の過圧で、ドアを開けても暖かい(あるいは冷たい)空気を取り込まないようにする技術が凝縮されている。
「市場性のある建築のイメージを意識的に放棄した姿勢は、評価されるべきものである」と建築家の審査員は讃える。
ちなみにワインセラーの上には、誰でも利用できるピクニックエリアがある。自分の好きなスナックを持ち込み、ワインを試飲するのに最適な場所だ。家族連れや友人と訪れる若者に人気という。
ナーエ
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko