コラム

「五輪」の節目に、北アルプスで若者の希望と没落の象徴をみる

2021年08月02日(月)10時10分

撮影:内村コースケ

第27回 白馬ジャンプ競技場 - 南小谷駅
<令和の新時代を迎えた今、名実共に「戦後」が終わり、2020年代は新しい世代が新しい日本を築いていくことになるだろう。その新時代の幕開けを、飾らない日常を歩きながら体感したい。そう思って、東京の晴海埠頭から、新潟県糸魚川市の日本海を目指して歩き始めた。>

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「日本横断徒歩の旅」全行程の想定最短ルート :Googleマップより

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これまでの26回で実際に歩いてきたルート:YAMAP「軌跡マップ」より

◆時代の節目を見る旅のキーワード「五輪」が開幕

いよいよ1年遅れの2020東京オリンピック・パラリンピックが開幕した。この「日本横断徒歩の旅」は、今回の東京オリンピックを戦後2度目の日本の節目と捉え、列島の中心をひたすら歩くことで、「日本の今」のリアルなディテールを体感しようという企画である。そのため、五輪に合わせてゴールするのが目標の一つであった。残す所あと40kmくらいだから、どうやらパラリンピックの閉会式がある9月5日前後には目標の新潟県糸魚川市に到達できそうである。

前回は、1998長野オリンピックの会場の一つとなった白馬のジャンプ競技場まで歩いた。施設内を見学し、ジャンプ団体の金メダルの栄光に思いを馳せたわけだが、五輪を軸に日本の戦後史を考えるとすれば、1964東京オリンピックが高度成長の号砲なら、バブル崩壊から10年を経た長野五輪の1998年は「戦後日本」の成長の限界点だったと思う。今回の東京五輪までの23年間は「失われた20年(30年)」という長い空白期間であり、東京五輪後にいいかげん前に向かって動き出さなれば、この国は堕ちていくしかないと僕は考えている。

それにしても、オリンピック開幕までの流れは、あらためて一つひとつの醜態を説明するまでもなく、かなり悲惨であった。開会式直前まで、「盗用」「政治利権」「広告代理店の暗躍」「いじめ」「差別」といった長野からの23年間にたまったポストバブルの日本社会の膿が、怒涛のごとく吹き出した。膿を出し切らなければ次のステップへは進めないのは道理だが、無観客の空疎な開会式の映像が、ここまで歩いて来た廃墟だらけの道のりで感じてきた、寂寞感漂う今の日本の空気と重なり合う。テレビで開会式を見ながら、正直寒気がした。

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今回のスタート地点は、長野オリンピックのジャンプ会場

◆鬱屈した気分を晴らしに絶景スポットへ

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北アルプスの雪解け水の清流。暑さを忘れさせてくれる

2020年・令和元年・オリンピックと、新たな時代に向けた区切りは、コロナによってガッツリと水を差された感もある。この旅も、緊急事態宣言が続く中、ずいぶんと世間の目を気にしながら制約の中で進めてきた。早くマスクをかなぐり捨てて自由に歩きたいところだ。

幸い、白馬にはそうした鬱屈した気分を晴らす絶好のスポットがある。北アルプスが眼前に迫る白馬岩岳の山頂に、カフェが併設された展望テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」が3年前にオープンした。以前、撮影で行ったことがあり、圧倒的な爽やかな景観にもう一度身を置きたいと思っていた。暑気払いにもちょうど良い。ジャンプ競技場から1時間余り歩き、リフトに乗って山頂を目指した。

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リフトに乗って白馬岩岳の山頂へ

◆雲上のウエディング・フォト

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岩岳山頂から雲の合間に見えた杓子岳山頂

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山頂には子どもたちに人気の「ハイジ」風の空中ブランコも

白馬岩岳は白馬地域唯一の独立峰で、標高1,289mの山頂の目の前に北アルプスの白馬三山(しろうまさんざん=白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳)がそびえ立つ。そして、その北アルプスを正面に見据える形でオシャレなウッドデッキ(マウンテンハーバー)が設置されている。この日は雲が出ていたが、三山の真ん中に位置する杓子岳の山頂が見え隠れし、国内で数少ない氷河に認定されている唐松沢雪渓も雲海の下に望むことができた。コロナ下とはいえ、日曜日だったのでそれなりに登山客や家族連れが集まっていた。マスクは外せなかったが、絶景を眺めながらコーヒーとシナモンロールを味わう思惑通りのリフレッシュタイムを満喫した。

マウンテンハーバーの中央には、北アルプスに向かって突き出た桟橋状のデッキがある。そこで記念写真を撮る人たちをしばらく眺めていると、ウエディングドレスとタキシード姿の新郎新婦が、カメラマンを伴ってやってきた。最近は趣向を凝らした前撮りウエディング・フォトを撮るカップルが増えている。僕もカメラマンとして「爆発」をバックに若い二人を撮ったことがある(下の写真)。ここの絶景もそうだが、少しシュールなミスマッチが、自分たちだけの個性的な思い出として歓迎される時代だ。今は、写真館で撮る花嫁衣装と紋付き袴姿の決まりきった結婚写真は、選択肢の一つでしかない。新しい夫婦像と言うと大げさかもしれないが、新時代への転換が求められるこの時代だからこそ、型にはまらない新しいものを求める若者たちを、僕はおおいに応援したい。

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以前撮影した爆発的なウエディング・フォト。新郎新婦自らが企画した

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北アルプスの絶景を背景にウェディングフォトを撮るカップル

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

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