コラム

党大会を控え、中国No.1トーク番組が終了(習近平「検閲」続報)

2017年09月19日(火)19時19分

Tyrone Siu-REUTERS

<2カ月前に「検閲」の最新事情をお伝えしたが、ついに、私が13年間出演してきた中国の人気テレビ番組「鏘鏘3人行」の無期限休止が発表されてしまった......。中国メディアは一体どうなってしまうのか>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。2カ月前に「中国No.1トーク番組もやられた! 習近平『検閲』最新事情」というコラムを書いたが、今回はその〝残念な続報"をお届けしたい。9月12日、私を育ててくれた中国の人気テレビ番組「鏘鏘3人行」が、無期限休止することが発表されたのだ。

「鏘鏘3人行」は香港のフェニックステレビで放送されている中国ナンバーワンのトーク番組だ。衛星テレビやネット配信を通じて中国本土でも視聴できる。名物司会者の竇文涛と2人のゲストが繰り広げる丁々発止のやりとりが人気で、1998年の放送開始から約20年間続いてきた名物長寿番組だ。

1999年には著名歌手にして習近平総書記の妻である彭麗媛も出演している。当時、習近平の肩書きは「福建省代理省長」。国民的歌手の彭麗媛と比べれば、決して知名度のある存在ではなかった。動画サイトには当時の番組が残っているが、竇文涛が「どんな旦那さんなの?」などと質問している。今振り返れば貴重な資料だ。

私は2004年に初出演を果たして以来、13年間、何度も繰り返し出演してきた。準レギュラーと言ってもいいだろう。ギャラは決して高くはない。3本出演してようやく往復の航空券になるぐらいだが、中国の人々に真実の日本を伝えたいという思いから出演を続けてきた。

収録はともかくハードだ。以前は香港、最近は北京のスタジオだが、遠路はるばる日本からやってきたゲストを最大限活用しようと、一気に数本分をまとめて収録するのだ。せっかくならばとフェニックステレビの別番組のゲストとしても呼ばれ、1日間の滞在中に6本の番組に出演したこともある。へとへとになったが、この経験を通じて私は鍛えられたし、中国での知名度も高まった。

ディレクターは「理由は分からないと答えてほしい」と

「鏘鏘3人行」の無期限休止が報じられると、SNSでファンから「李さん、なぜ鏘鏘3人行は終わるんですか? 理由を教えてください」といった質問が次々と飛んできた。私自身、フェニックステレビからなんの連絡ももらっていないが、ディレクターに問い合わせると、「理由は分からないと答えてほしい」とだけ言われた。

ただ、休止については驚きというよりも、「ついにその時がやってきたか」という思いが真っ先に浮かんだ。

というのも、「鏘鏘3人行」の持ち味は政治的に敏感な話題ぎりぎりにまで踏み込む(中国ではこうしたぎりぎりのトークを「擦辺球」と呼ぶ。卓球で台の角を狙うエッジボールから転じたスラングだ)ことにあるからだ。そのため、中国当局には以前から目を付けられていた。

先のコラムでも紹介したが、中国で放送される時には問題あるトークがカットされてきた。今夏にはバックナンバーのネット公開が中止に追いやられた。番組の終了も時間の問題だった。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story