トヨタの新型RAV4、米向けは現地生産も検討 関税や為替リスク勘案=関係者

トヨタ自動車が、米国で最も売れているスポーツ多目的車(SUV)「RAV4」の新型車について、同国で現地生産を検討していることが分かった。写真はトヨタのロゴ。昨年2月、ニューデリーで撮影(2025年 ロイター/Anushree Fadnavis)
Maki Shiraki
[東京 18日 ロイター] - トヨタ自動車が、米国で最も売れているスポーツ多目的車(SUV)「RAV4」の新型車について、同国で現地生産を検討していることが分かった。当初はカナダと日本からの輸出で賄う計画だったが、現行車同様、ケンタッキー州でも生産する案が出ている。トランプ米政権の関税政策や為替変動など、不透明なリスクを極力回避して需要拡大に対応したい考え。関係者3人が明らかにした。
同関係者らによると、トヨタは全面改良した新型RAV4を今年後半に発表し、各市場へ順次投入する。米国向けは12月からカナダのオンタリオ州にある工場で集中的に生産して効率化を図るとともに、日本からも輸出する計画になっていた。
だが、供給を上回る需要が予想されることから、生産拡大案を複数検討。各工場の生産余力や関税などによるコスト上振れリスクを勘案し、ケンタッキー工場を生産拠点に追加する可能性を選択肢の1つとして探っている。決定した場合、ケンタッキーでの立ち上げは27年からになるという。
関係者の1人は「関税政策にはできるだけ振り回されたくない」とし、準備をすでに進めているカナダでの集中生産は維持すると説明。日本からの輸出を増やすと「関税リスクだけでなく、為替影響にも左右され、トータルでコストがかさむ懸念がある」とも話す。
トヨタ広報はロイターの取材に対し、「顧客への最良のサービス提供と従業員の安定した雇用を確保するため、製造効率の向上に向けた取り組みを継続的に行っている」と説明。「現在、発表すべき事項はない」とし、憶測に関するコメントは差し控えるとした。
米向けの現行RAV4はカナダで大半を生産し、ケンタッキーと日本でも一部をつくっている。
現行車はモデル末期ながら好調な販売が続いている。2024年のトヨタの世界販売全体は約1015万台で、このうち米国は約233万台と約23%に相当。RAV4は昨年の米国販売の約2割を占め、トヨタで最も売れた車種だった。
自動車業界の調査会社ジェイトー・ダイナミクスによると、RAV4は昨年、米国市場で長年首位だったフォードの「F-150」を抜き、前年比9%増の約47万5000台以上を売り上げた。
トランプ米大統領は今月3日、25%の自動車関税を発動した。乗用車の場合、日本からの対米輸出の税率は2.5%から27.5%へ引き上げられたが、トランプ氏は14日、一部を見直す考えを明らかにした。具体策は分かっていない。
関税への対応を巡っては、ホンダが16日、国内で生産している米国向け「シビック」5ドアモデルのハイブリッド車について、国内生産を米国生産に変更すると明らかにした。埼玉県寄居町での生産は終了し、6―7月以降にインディアナ州の工場へ移管する。
日産も4日、4月から1交代に減らす予定だった米国工場での「ローグ」の生産ラインで2交代を維持する方針に変更し、日本での米国向け「ローグ」の生産を減らす計画にしている。
(白木真紀 編集:久保信博)