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「買い物弱者」問題のこれから──食材宅配サービスから考える、免許返納後の暮らし
筆者は兵庫、大阪、京都、欧州、埼玉、東京と、学業や仕事の都合で引越しを繰り返してきた。仕事の効率化を考えて、家電や家具、日々の食にもこだわってきた。そこで思うのは、人が1人で生活するために本当に必要なものは実は少なく、1週間に食べる物や買う物もだいたいパターン化されてくるということだ。
1週間の献立を考えて計画的に作ることができれば、ネットスーパーや生協などの宅配は、それをサポートする最適な手段になり得る。スーパーに行かないと生活できない時代ではなくなってきている。
実家の祖母とその友人(75歳以上の高齢者)の買い物や外出の行動を観察していると、筆者の感覚だが、買い物の仕方はあまり計画的ではなく、必要なものを思いついた時に都度買い物に行く傾向が若者よりも強いように思う。
もちろん、たくさんの選択肢の中から自分の食べたい物を自分の目で選ぶ楽しみは蔑ろにされるべきではない。ただ、1週間の献立をある程度設定したり、好みに合ったサービスの申し込みや必要な食材を書き出すことも、誰かに手伝ってもらいながら練習しておくといいだろう。
交通設計に「モノの移動」の視点を
さて、ここでモビリティの話も加えてみたい。いろいろな自治体の交通会議に委員として参加してきて、一般の生活者視点から不思議に思うことがある。
会議では基本的に、公共交通が持続可能な状態か、住民が公共交通を利用してスーパーや病院に行くことを中心に議論をしている。一方で、家族と同居していて買い物に連れて行ってもらえるか、宅配サービスを利用して買い物をしているかを調べたり、公共交通の代わりに宅配サービスの利用を促したりする案はあまり聞かれない。
外出をして公共交通に乗ってもらうということが交通会議の前提にあり、外出や公共交通を利用しない選択を促すという発想はご法度なのかもしれない。
地域の交通設計について、ヒトの移動だけでなく、モノの移動という観点をうまく組み合わせて考えることはできないだろうか。
徐々にデジタルを使いこなす層が増えてくることも踏まえて、中長期的には高齢者への交通戦略と宅配サービスの可能性を総合的に検討するような議論が出てきてもいいのではないかと筆者は考える。
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