コラム

「買い物弱者」問題のこれから──食材宅配サービスから考える、免許返納後の暮らし

2021年09月29日(水)20時40分

kusuda210929_co-op2.jpg

「3日分の時短ごはんセット」の食材で作った時短メニュー 筆者撮影

毎週月曜日の12時頃に、1週間の食材カタログと前の週に注文した食材を届けてくれる。不在の時は、カタログはポストの中に、食材は家の前に半日分の保冷剤を入れて置いていってくれる。食材カタログには、生鮮食品、冷凍食品、調味料などの他に、生活関連のページもある。緊急事態宣言でオンライン会議が増えて、直接人と会わない日も多いなか、毎週顔見知りの担当者が自宅を訪ねてくれるのも嬉しい。

筆者は「3日分の時短ごはんセット」3人分(約5千円)を愛用している。15〜20分の短時間で豪華な一汁三菜ができるようになっている。多く作って2回に分けて食べたり、余った食材で簡単に一品作ったり、自分で使い方をアレンジすることもできるため、3人分の食材がちょうどいい。栄養のプロが考えた時短メニューは、作るたびに目から鱗で、献立のマンネリ化に悩んでいた筆者は重宝している。

コープの宅配サービスは基本的にアナログで、カタログも紙に鉛筆で書き込むため、高齢者にやさしい。もちろん、スマートフォンを使って注文することもできる。

遠くに住む父母の買い物が心配で、見守りも兼ねてほしいという家族のケースなどにはちょうどいいと感じた。

生協の届かない地域は?

一方、献立と食材や調味料のセットではなく、キャベツ、バナナなどの単品での買い物になると、自分で目利きした品物を購入するわけではないので、期待外れな食材が届くこともある。多くの知人がコープの宅配を利用しているが、この点に不満を感じることが多いようだ。

また「今すぐ欲しい」というニーズには応えられない。スーパーやコンビニのように、すぐには入手できないのは難点だ。その代わりに事前にまとめて注文することで食品ロスを防ぎ、人口の少ない地域での配送も可能にしている。

では、生協の届かない地域はあるのか?

埼玉県で展開している生活協同組合パルシステム埼玉に問い合わせたところ、「秩父などの山間部も含めて埼玉県全域に対応している」と回答があった。同組合は、食品ロスを減らすため、店舗を持たず、自宅への配送に特化している。

筆者はこれまで1つの県につき、1つの生協しかないものと思っていた。実際には、1つの県にいろいろなタイプの生協がある。埼玉県には、パルシステム埼玉の他にもいくつかの生協がある。店舗があったり、サービス付き高齢者住宅、共済保険などのサービスを展開している生協もある。

各生協で事業形態が異なるため、居住地域にどんな生協があるのかを知っておいて損はないだろう。

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story