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英保守党は選挙を諦め、中間層を捨てる...その理由と3つの兆候
当初は手腕を期待されたスナクだったが(9月のG20サミット) MARIA UNGER-UK PARLIAMENT-REUTERS
<イギリスのスナク首相率いる与党・保守党は、幅広い有権者に受け入れられる政策を放棄して、コア支持層を熱狂させる政策に走り出した>
英首相に就任した当時、リシ・スナクは手堅い選択肢に見えた。いくつかの事態がうまく運べば、2025年1月までに行われる次回総選挙で保守党を勝利に導くチャンスを辛うじて手にしていた。
スナクは何よりもまず力強い経済回復を必要としていた。その間にジョンソン元首相の「パーティーゲート」への怒りと、トラス前首相の瞬間退陣劇の恥を、有権者に忘れてもらう算段だ。だが前任者らの失態を上書きするどころか、今のスナクはさながら先細りの政権を率いる人物に見えている。
多くの課題において、保守党は自らを「ミドル・イングランド(典型的なイギリス人)」の党たらしめ、2010年以降4回連続の総選挙勝利をもたらした政策から次々と撤退している。信頼して保守党に投じていた無党派層も、今は及び腰だ。
まず、ここ最近では、「ネットゼロ」の目標から後退してみせた。環境政策は、必要に応じてイギリス有権者に広く受け入れられるし、アメリカと違って「気候変動を否定する」ような政治勢力はイギリスには存在しない。保守党の環境分野に力を入れてきたのはひとえに、「単純な」右派を超えた広い支持を得られるから、というのが理由だ。
一例として、保守党は2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止すると発表していた。だがスナク政権は、この目標を35年に先送りすると表明した。
既定の目標時期(3年前にジョンソン政権が決定した)に向けて着手していた製造業者にとってはゴールポストを動かされるようなものだから、この政策は悪手だ。EU以上に野心的な目標を設定して、ブレグジット後のイギリスは環境分野でのリーダーだと標榜することもできなくなったから、体裁としてもひどい。
対する労働党も存在感なし
2つ目に、政府は高速鉄道「HS2(ハイスピード2)」のマンチェスター接続計画を放棄しようとしているようだ。新たな高速鉄道ネットワークの必要性は、イギリスでは常に賛否両論を呼んできた。イギリスは比較的小さい国だし、ロンドンから北部の大都市にもそんなに時間をかけずに行ける。だから巨額のコストの伴う高速鉄道計画はなかなか正当化しづらい。
それでもHS2は、不振にあえぐ北部地域を「レベリング・アップ」(活性化)して「ノーザン・パワーハウス」(北部振興地域)を生もうとの保守党の政策の重要な部分を占めていた。
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