コラム

イギリスで「学生のような(質素な)生活」は、もはや死語?

2019年12月03日(火)15時00分

今の学生たちは、年間9000ポンドほどの生活費補助を借りることができる(実家住まいの場合は少々減額されるし、物価の高いロンドンに住む学生はもう少し高額になる)。

この大きな金額に照らし合わせれば、月額150ポンドを上乗せしてもうちょっといい部屋を借りても大丈夫だろう、という気になるのが人間の本質というもの。そして、4万ポンド以上の借金を抱えて大学を巣立つとなったら、試験の打ち上げの東京旅行に800ポンドかかるとなっても、たいした金額には見えないものだ。

彼らの物の見方は、僕とは完全に違う。僕は年間2000ポンド以下で暮らしていたことを覚えているから、彼らは既に大変な額の借金をしていると考える。彼らはそれを「多少は増えた」くらいに考えている。

もちろん、僕がイギリスの若者の浪費を良く思っていないこともあるけれど、それ以上に彼らを借金漬け生活へと「プッシュする」システムを懸念してしまう。数万ポンドの無担保債務を抱えるのが常識になり、身の丈に合わない高価な買い物もできるようになってしまい、「自分へのご褒美」がいいレストランでの食事、ではなくてタイのリゾートホテルでの休日になってしまう......そんなシステムだ。「学生のように生活する」は今や、そんな意味になってしまった。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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