ドイツの街角から
ドイツ・文豪ゲーテの生誕地フランクフルト
ワインを愛飲したゲーテ
ゲーテの祖父は、フランクフルトで宿屋「ヴァイデンホーフ」とワインショップを経営し、一族の繁栄の基礎を築いたそうです。一家は街のはずれに小さなブドウ畑を所有しており、幼いゲーテは子供の頃からここでブドウの木を育てる仕事に親しんでいたとか。すでにゲーテがワインを愛飲するバックグラウンドがあったようです。そしてゲーテの言葉には、ワインをテーマとして説明したものが数え切れないほどあります。
ゲーテは、大人になってから1日に2リットル、時にはそれ以上のワインを飲んだようです。当時のワインが現在よりも低アルコールであったことを考慮しても、この量は想像を絶するものであり、現代の誰もがアルコール中毒としか言いようがありません。ちなみにゲーテは、ワインには活力を与える効果があり、健康に役立つという意見を持っていました。
ゲーテは、しばしば滞在したラインガウのワイン、特にヨハニスベルクとリューデスハイムのワインも愛飲していたとか。無数に存在したワインの中で、特に愛したのは「ヴュルツブルガー・シュタイン」だったようです。「もっとヴュルツブルガーを送ってくれ。他のワインは私にとって美味しくないので、いつものお気に入りの飲み物がなくなると困る」と語っています。
この機会に我が家にある2冊の書籍に再び目を通しました。1冊目はクリスマスのゲーテ家の様子を描いた「Weihnachten bei Goethe・Werner Voelker」です。今の子供達と同じように、ゲーテはクリスマスを大変楽しみにしていた様子が描かれており、微笑ましい限りです。
また「Dichtung und Wahrheit (詩と真実)・1und 2Teil」に書かれている劇的なシーンは、頭から離れません。ゲーテをとり上げた助産婦さんの不手際で、ゲーテは死亡状態で生まれてきたといいます。幸いにもあれこれ手を施した甲斐あって、ようやく息を吹き返したとのことです。
もし産声を上げなかったら、文学のみならず自然科学や美術に至るまで幅広い分野において偉大な足跡を残したゲーテはこの世にいなかったのです。ゲーテの聖地巡礼は、あり得ませんでした。というのも、ドイツの観光街道「ゲーテ街道」の8都市(フランクフルト、ウェッツラー、フルダ、ヴァルトブルク、ワイマール、エアフルト、ライプツィヒ、ドレスデン)を巡ると、彼の人生を辿っていくことができるからです。
生誕地フランクフルトを後にして訪問した他の都市もいつかまた紹介できればと思います。
Goethe Haus Frankfurt (ハウス内は特別許可を得て撮影)
著者プロフィール
- シュピッツナーゲル典子
ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。
Twitter: @spnoriko