1740年に建てられた後期バロック様式の修道院ワイナリーだった荘園は、その後近郊の街トリアーの神学校に引き継がれ、250年以上にわたって人々が行き来した場所だった。2016年以降、モーゼル・ザール地方にワインと一風変わった建築プロジェクトで注目されるようになったこのワイナリーは、アンナさん(画像）＆ステファン・ライマン氏の醸造所「カンツハイム」だ。リースリングワインを中心に生産しており、ゲストハウス、イベント会場も提供している。

歴史的な荘園を文化財保護法に沿って改築し、その左右にオランジェリーと近代的な農場棟の2棟を増築した。

なかでもオランジュリーは「建築の最高傑作 」と審査員たちが評価するハイライトだ。ブドウ畑の真ん中にある鉄とガラスで囲まれたオランジェリーは、、自然と文化を融合した魅力的な空間で、ヴィノテーク建築賞審査員も「建築の最高傑作」と評価する同ワイナリーのハイライト。この部屋は、地元のコンツ登記所が市民結婚式のための出張所として使用しているそうだ。また、朗読会、コンサート、レセプションなどのイベント会場としても人気だという。

荘園の反対側にある建物は、2つのゲストルームとワイン醸造に必要な技術を収容した。5部屋とアパートメントも提供する。

ヴィノテークはこぢんまりとしているが、とても優雅だ。まるで友人に招待され、プライベートダイニングにいるような気分になる。

▽ フォン・オートグラーベン・カンツェム　(ザール)　

ヴィノテーク建築賞受賞ワイナリーではないが、ワイナリーカンツハイムから歩いて10分弱のワイナリーフォン・オートグラーベン・カンツェムを訪問した。ちなみにオーナーは、ドイツの人気司会者ギュンター・ヤオホ夫妻。

除草剤、殺虫剤を一貫して使用しない姿勢で有機ワインを生み出しているワイナリーだ。ブドウ栽培における持続可能性のためのフェア・グリーン認証を2014年に取得した。環境保護、ビジネス管理、社会的コミットメントの分野が含まれ、偉大なワインは人間と自然との調和の中でしか生まれないという考えを持つ。

ザール川に直接面しているカンツェマー・アルテンベルクのブドウ畑は、同ワイナリーの中心的存在。世界有数の急勾配で、全長250mは世界最長級の急斜面だそう。

▽ モノポールワインで知られるワイナリーマキシミン・グリューンハウス(ルーヴァー)

ルーヴァー川近郊にある伝統的なワイナリー。ブドウ畑は、ルーヴァー川の左岸、モーゼルに流れ込む地点から約2kmの南向きの広大で急な斜面の麓に位置している。ワイナリーがこの敷地を単独で所有・管理するモノポールワインを生産していることでも有名だ。

アブツベルグ、ヘレンベルク、ブルーダーベルグを所有し、赤と青の粘板岩が風化した土壌に約33ヘクタールが連なっている。この土壌が特にミネラル感のある繊細なリースリングのベースとなっている。

このワイナリーは1802年まで修道院によって運営された長い歴史を持つ。後に民間の所有地となり、1882年に現オーナー家フォン・シューベルト氏の曽祖父がこの地を得たという。2014年よりマキシミン・フォン・シューベルト氏と妻アメリー(画像）さんが運営している。

新しいヴィノテークについて、アメリーさんは、「歴史を大切にしながらも、モダンで機能的なヴィノテークを実現したかった」と語る。部屋の中央には、グリューンホイザー・オークの大きなテーブルがあり、この地域の文化に触れることができる。

訪問当日は、結婚披露宴のパーティ客で大賑わい。誕生日や特別イベント会場としても人気だという。

ザールワインと共に料理を楽しむワインレストラン　アイラークップ