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ラッシャー貴子|イギリス

人生初のウィンブルドン観戦でテニス愛に引き込まれる

 この日はきれいな青空が見えていて、暑過ぎも寒過ぎもしない、さわやかなテニス観戦日和だった。会場に向かう途中、ほのぼのした手書きの「駐車場」の看板が見えて、この時期は一般家庭が駐車スペースを貸し出すことを思い出した。会場の駐車場が限られているからだ。

 気になって料金を調べてみると、公式駐車場だと普通自動車で40ポンド、電気自動車は20ポンド(それぞれ約7200円と約3600円。おそらく1日の料金)。それに対してご近所駐車場の値段は家によってさまざまだ。けれども、たとえば会場まで徒歩17分も歩くのに6時間50ポンド(約9000円)前後というものも多くて、料金設定は全体に強気だ(それでもずいぶんネット予約が入っていた)。

 ついでに言うと、駐車スペースだけでなく家ごと貸してしまう家庭もある。ロンドン南西部のウィンブルドンは住宅地で、年に一度だけホテル需要が一気に高まる。家の周りはどうせ騒がしくなるんだし、自分たちはゆったりホリデーに行って、その間に高い家賃も稼いじゃおうというわけだ。期間限定のこの貸し家ビジネスはAirbnbが定着するずっと前から行われていた。

ウィンブルドン - 5.jpeg

センターコート前の大人気撮影スポット、フレッド・ペリー像。ペリー(1909 - 1995)は伝説の英国人テニス選手だ。ウィンブルドン選手権が開かれる会場の正式名称はオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ。ここでテニスの試合が行われるのは大会が開かれる年に一度だけだ。残りの期間はコートのメンテナンスをしていて、敷地内でローンテニス博物館やセンターコートを見学したり、公式ショップを訪れたりして楽しむことができる。筆者撮影

 会場をぐるりと囲むフェンスには20か所ぐらいの入り口があって、指定された番号のゲートを探した。荷物検査を受けて中に入ると、すでに大勢の人が嬉しそうに歩き回っていた。さすがテニスの聖地、まるでディズニーランドのような観光地感が漂っている。後で話をしたウィンブルドン好きの友人たちは、このお祭りみたいな雰囲気もウィンブルドンの大きな魅力なんだと教えてくれた。会場内で頭から「楽しい」と吹き出しを出している人たちの間をすり抜けて、まずはセンターコートの席に向かった。

ウィンブルドン - 2.jpeg

席から見たセンターコート。斜め前に見えたロイヤルボックスには、前の週にロジャー・フェデラーやケイト妃、デビッド・ベッカムなどが続々と来ていたので、つい期待してしまったけれど、残念ながらわたしにわかる有名人は見つからなかった。筆者撮影

 やってきました、センターコート。ローンテニス博物館のツアーで見学したことはあったけれど、満席の観客と一緒に試合を観るのはやはり感激だった。会場全体ではTシャツや短パン姿も多いのに、センターコートでは女性はサマードレスやワンピース、男性はシャツやジャケットという服装が目立つ。チケットの説明にも、「観戦にドレスコードはありませんが、大きなコートではドレスアップが好まれます」と書かれていた。

 席に着くと、午後1時30分からの第1試合が始まっていた。女子シングルスのアダッド・マイア対リバキナ(昨年の優勝者)だ。張り切って観始めたけれど、残念なことに30分ほどでアダッド・マイアがけがで棄権、リバキナの不戦勝になった。退場するアダッド・マイアに贈られた拍手は特別に温かかった。同じ気持ちを周りと共有するのは嬉しいものだ。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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