England Swings!
戴冠式の公式プロジェクト、ザ・ビッグ・ヘルプアウトでボランティアをしよう
世界中が見守るなか、英国王チャールズ3世の戴冠式が5月6日に行われた。華やかに彩られた馬車、荘厳な儀式、煌びやかな王冠や礼装。まるで中世にタイムスリップしたかのようで、不思議な気持ちでテレビの画面を見つめた。その様子は日本でも詳しく紹介されているので、ここでは触れないけれど、ご興味ある方は、BBCがまとめた美しいハイライトの写真があるので、こちらからどうぞ(英語版と日本語版で取り上げる写真が微妙に違うのもおもしろい)。
当日はあいにくの天気だったものの、会場のウェストミンスター寺院やパレードが通過するバッキンガム宮殿の周辺は大勢が詰めかけて温かなお祝いムードに包まれた。ただ現地で見ていて、昨年6月の故エリザベス女王の即位70周年に比べて、今回の戴冠式の盛り上がりは控えめだったと感じた(晩年は「国民のおばあちゃん」的人気が高く、英国史上最長の即位70年を祝ったご長寿のエリザベス女王と比べては気の毒かもしれないけれど、きっとしばらくは何をしても母である故女王と比較されるのだろう)。飾り付けが始まったのも街の雰囲気が盛り上がり始めたのも遅かったし、ディスプレイを出す店もずいぶん減った。
王室離れが広がっていること(支持者は全体で58%、18歳から24歳では32%に減る。市場調査会社YouGovの調べ)や、ダイアナ元妃との離婚後に不倫相手だったカミラ王妃と結婚したチャールズ国王をよく思わない国民がいまだに多いことも理由として考えられるけれど、加えて昨年からの生活費高騰の影響もありそうだ。飾りたくても予算が回らないのかもしれない。政府統計局によると、3月の英国の物価は昨年に比べて10.1%上昇している。賃金アップを要求する鉄道職員、教員、NHS(国民保険サービス)の若手医師のストライキが続くのに、5000万ポンド(約85億円)から1億ポンド(約170億円)(BBCの報道)を費やしてまで戴冠式をする必要があるのか? と議論にもなった。
そんななか、広く報道されている通り、戴冠式には現在の英国の多様性を映し出すさまざまな新しい試みが盛り込まれた。招待客の数やパレードの距離をスリム化したり、英国国教会以外のさまざまな宗教の指導者や、社会に貢献した一般人を招待したり、他国にルーツのある人や女性が式で大役を担ったり。古風な礼装の男性の列に混じって女性が重い剣を捧げ持って歩く姿や、ターバンを巻いたシーク教徒が国王に宝物を差し出す姿には、新しい時代を感じた。
新しい試みの中でも特におもしろいと思ったのが、ボランティア活動への参加を奨励するザ・ビッグ・ヘルプアウトだ。これは、国王の長年の公務への貢献を記念して計画された、戴冠式の公式プロジェクトだ。式の2日後の月曜(5月8日)が祝賀休日となったので、多くの慈善団体と協力して、この「ボランティアの日」への参加が全国に呼びかけられた。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile