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ラッシャー貴子|イギリス

戴冠式の公式プロジェクト、ザ・ビッグ・ヘルプアウトでボランティアをしよう

 実は最初にこのプロジェクトの話を聞いた時、戴冠式とボランティアがまったく結びつかず、「公務を記念して」という表現から、「国王も働いているんだから、きみたちも働きたまえ」っていうこと? と変な想像までしてしまった。けれども、資料を見るとすぐに、これが大いなる勘違いだったことがわかった(当たり前だ)。

 というのも、ボランティア活動をすると、地域や特定の目的によい効果がもたらされるだけではなく、参加者にも大きなメリットがあるというのだ。数多くある資料を本当にざっくりまとめると、ボランティア活動をすることで参加者は喜びや充実感を感じ、自信や自尊心が高まり、体が鍛えられ、鬱の症状にもよい影響があるということらしい。ザ・ビッグ・ヘルプアウトのサイトにも、ボランティア参加者の73%が「自信がついた」という統計結果が掲載されているし、ちょっと検索をするだけで、日本語でも同じような読み物が山ほど出てくる。知らなかったなあ! チャールズ国王は1970年代からボランティアの力を信じて、公の場でもそう発言していたそうだ。早くから環境問題を熱心に説いてきたとは聞くけれど、ボランティアにもそんなに長きにわたる関心があったとは。

戴冠式前後に混雑が予想された鉄道や地下鉄の駅では、「戴冠式の週末を楽しんで、目的地への移動は安全に。くれぐれも(車両とホームの)隙間には気をつけて」という国王夫妻によるアナウンスが流れた。最後の「隙間に気をつけて(Mind the Gap)」は地下鉄アナウンスの定番中の定番だ。ふだんは電車になんて乗らない国王が口にするところがおかしいし、そこを読み上げるチャールズ国王の声はまるでウィンクをしているよう。故エリザベス女王もジェームズ・ボンドやくまのパディントンと共演したことを思い出すけれど、こういうジョークはチャールズ国王ならでは、という気がする。

 ボランティア活動が浸透している英国では、あちこちで「ボランティア募集」の表示を見るけれど、こうして全国的に声をかけられるとハードルがぐっと下がる。実はわたしも、それなら参加してみようかと背中を押されたクチだ。このザ・ビッグ・ヘルプアウトには3万3228の団体が参加し、5万5123件の活動がリストアップされた。

 参加方法はとても簡単で、サイトかアプリに並んだ項目から希望するボランティアの対象(子ども、高齢者、動物など)や分野(調理、清掃、大工仕事など)を選んで、希望する地域の郵便番号を入力すると、参加できるボランティアがあっという間に画面に出てくる仕組みだった。

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わがフラットの戴冠式記念パーティーの様子。戴冠式の翌日は全国各地域でストリートパーティーが開かれた(集まった人数はやはり去年の女王のお祝いより少なめだった)。道路にテーブルを出すパーティーをよく見るけれど、集合住宅なので共有の庭でピクニック式の集まりをしている。もちろん紙の王冠を被った人が何人かいた。王室行事のよいところのひとつは、こうして地域の人たちとの交流の時間が持てることだ。筆者撮影

 ボランティアの仕事というと、たとえば、食料を配給する団体での食品の仕分けや調理、地域のティールームの店番などというわかりやすいものしか想像できなかったけれど、ザ・ビッグ・ヘルプアウトのサイトや検索結果を見ていて、意外に小さなこともボランティア活動に含まれることがわかった。町の建物のペンキ塗り替えを手伝うこと、保護犬を家に迎え入れること、食料を配給する団体に「食料を寄付する」こと。これらすべてがボランティア活動として捉えられている。

 これなら気負わずにわたしにもできそうだ。以前から地域活動に参加してみたかったので、いい機会になると俄然張り切った。けれども、いざひとりで参加するとなると緊張する。そこでまずは登録不要で、当日にその場に行くだけというハードル低めの地元の作業を選ぶことにした。内容は道の清掃か、花壇への種まきで、どちらも1時間だけだ。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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