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ラッシャー貴子|イギリス

戴冠式の公式プロジェクト、ザ・ビッグ・ヘルプアウトでボランティアをしよう

 当日の月曜は少し肌寒く、暗い雲がたちこめていた。雨が多いこの国の人たちは濡れるくらい何でもないので、もちろん雨天決行だろうけれど、厄介なことに、引いていた風邪がずいぶん悪くなっていた。夫に家事をすっかり任せて寝ているのに、午後からボランティアに出かけるというのはいかがなものか。しばらく悩んで、活動には参加せずに、見学だけさせてもらうことにした(結局行くのだった)。

 集合場所になっていた教会の広場では、ちょっとしたお祭りが開かれていた。ギターの弾き語りをバックに、子どもたちが国旗と同じ色の細長い風船で王冠を作ってもらったり、玉座に見立てた椅子に座って写真を撮ったりしていた。

ボランティアの当日は(物陰からのぞいていたせいか)うまく写真が撮れなかったので、そう遠くない地域でザ・ビッグ・ヘルプアウトの一環として行われた公園の清掃の様子をどうぞ。わたしが見学させてもらった活動もこんな感じで、ごみを拾うためのマイ・マジックハンドを持参した人もいたのだった。すごいな。

 広場の一角には30人ぐらいが集まっていて、やがて係の人の指示を受けて二手に分かれた。清掃班は大きな袋を渡されて道端や広場に落ちたごみを拾い、種まき班は近くの花壇に移動して穴を掘り始めた。小さな子どもを連れた家族(あるいは母と子)と年配の女性が中心だった。イベントの案内に「道具のある方はお持ちください」と書かれていて、わたしにはどんな道具だか想像がつかなかったのだけれど、半数以上が自前のゴム手袋や小さなシャベルを持参していた。なるほど。みんな、慣れているのかな。

 作業中も、黙々と手を動かすというより、とにかくみんな楽しそうだった。小さな子は走り回っていたし、誰もがときどき作業の手を止めてはおしゃべりをしていた。この様子を見ていて、ボランティアには参加者自身にもよい効果がある、というのが少しわかった気がした。やっぱり次はわたしもやってみたい(というか、今日はこっそり見ているだけでごめんなさい)。

 全国でザ・ビッグ・ヘルプアウトのイベントが行われたこの日は、国王夫妻を除くロイヤルファミリーも率先してボランティア活動に参加し、スナク首相まで小さな祝賀パーティーの調理の手伝いや給仕をしていた。ウィリアム皇太子の上の2人のお子さんは、前日に夜遅くまで戴冠式の祝賀コンサートに出席していたのに、朝から元気にドアを塗ったり、重機を動かしたりしていた(ロイヤルファミリーは子どもの頃から忙しい)。

ザ・ビッグ・ヘルプアウト当日に朝から作業に精を出すウィリアム皇太子一家。一番下の5歳のルイ王子は、前夜8時に始まった祝賀コンサートには出席しなかったけれど、この日は朝からボランティア活動で活躍したようだ。子どもの多いこのイベントには食べ物やゲームらしきものあって、ますます楽しそう。

 戴冠式の前に人と話していて、わたしの周りではザ・ビッグ・ヘルプアウトはそれほど知られていないと感じていたけれど、当日でも間に合う活動も多かったのか、最終的には650万人がボランティアに参加したそうだ。英国の総人口が約6700万人なので、10人に1人弱が活動したことになる。

 ザ・ビッグ・ヘルプアウトというプロジェクトはこれで終わりではなく、今後も続くようだ。わたしも何かしてみようと思っている。

 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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