England Swings!
ロンドンでまさかの40度超え、英国で感じる暑さとは?
今回の里帰りでは、日傘も日本のよい習慣だとしみじみ感じた(最近は男性もさしているようですね)。昔のヨーロッパの絵画では貴婦人が優雅にパラソルをさしていたりするけれど、日焼けが流行している今はほぼ使われていない。ただここ数年の暑さで、少しずつ見かけるようになってきてはいるので、今後に期待したい。日本でかわいい日傘を買ったので、わたしも英国で日傘デビューしたいのだけれど、周りがあまりに使っていないと気後れして使いにくいのだ。
Mousehole
-- The Prince of Wales and The Duchess of Cornwall (@ClarenceHouse) July 18, 2022
Their Royal Highnesses began their annual three-day visit of Devon and Cornwall in the quaint seaside town of Mousehole. pic.twitter.com/aLzbdWzaVo
猛暑当日の2日間は、朝早く起きて暑さに備えたり、子ども用のビニールプールを庭に出したり、海やプールに行ったり、冷房のある場所に涼みに行ったり、罪悪感を感じずにアイスを食べたり昼間からビールを飲んだり、いつもと違う時間を過ごした人が多かった。家にこもっていたわたしでさえ、窓を開けたり閉めたり、外の壁に触ったりして、まったくの非日常だった。それがまたお祭り気分と結びついて、やっぱり「猛暑祭り開催中」に感じられた。
それは楽しかったのだけれど、慣れない暑さは社会に悪影響もずいぶんもたらしてしまった。病院にかつぎ込まれた熱中症状の患者さん、冷蔵・冷凍庫が壊れて品薄になったスーパー、暑さで線路や滑走路の表面が溶けて欠便、間引き運転、スピード制限をしなければならなかった鉄道や空港などの交通機関、そして足止めされた人たち。ロンドンの地下鉄も不具合が多発してあちこち遅れて、大混雑したようだ。仕事に出かけた友人は、いつもなら通勤30分のところ、乗り換えたり待たされたりで2時間半かかったと教えてくれた(繰り返しますが、地下鉄に冷房はほとんどありません)。深刻な猛暑を受けて地球温暖化にかかわる議論があちこちで活発になっているけれど、こうしたインフラの暑さ対策を整備するには少なくとも10年はかかるそうだ。
火災も多かった。「暑くて火事になる」という現象は日本であまり聞かないので、前々から不思議に思っていたけれど、今回学んだところではやはり湿度と関係があるようだ。ヨーロッパではもともと空気が乾燥している上、今年は暑いだけでなく雨もあまり降っていない。本来は冬にも青々としている英国の芝生も、今年の夏はすっかり乾いて茶色くなっている。空気も草もからからになると、ポイ捨てされたタバコやバーベキューのちょっとした残り火で簡単に火がついて、あっという間に燃え広がるというわけだ(だから夏に湿度の高い日本では起きないのですね)。山火事は南ヨーロッパに多い印象だったけれど、今回の猛暑ではロンドン近郊でも十数件発生して、住宅にも燃え広がったものもあった。BBCの報道では、この猛暑の2日間、ロンドン地区の消防隊はなんと第二次世界大戦以来の「忙しさ」だったそうだ。
ロンドンでは、猛暑祭り2日めの夕方に曇り始め、夜になってやっとほんの少し雨が降って涼しくなった。40度を超えた翌日は26度、その次の日は22度と気温がぐいぐい下がったので、まさに祭りの後という気分だった。寂しいじゃないの。暑さが少し戻った時にはほっとしたくらいだ。天候が不安定なこの国のこと、早い秋が来ないうちに夏を楽しんでおこうと思う。
著者プロフィール
- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile