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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

ロンドンでまさかの40度超え、英国で感じる暑さとは?

 ロンドンを走る地下鉄やバスも、冷房装置があるのはほんの一部だ。地下鉄の構内もホームも地下深く潜っていくエスカレーターも、もちろん車内にもエアコンがないので、夏の地下鉄は蒸し風呂のようになる。夏の地下鉄のホームは50度ぐらいになるという都市伝説がまことしやかに語られるほどだ。

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夏になると毎年、ロンドンの地下鉄には「暑い時には飲み水を持って乗りましょう」というゆるい解決策を示すポスターが出る。これは今年のポスター。バスはともかく、世界で初めて1863年(159年前!)に誕生した地下鉄では、すでにある設備にエアコンを取り付けるのが難しいと聞いたこともある。筆者撮影

 そうは言っても、湿度が低いから日本より楽でしょう? と思われるかもしれない。確かにヨーロッパは空気が乾燥していて、7月19日で比べてみると、ロンドンは気温38度、湿度18%、東京は気温34度、湿度74%だった。けれでもたとえ湿度が低くても、暑いものは暑い。日本の暑さをよく(スチーム)サウナに例えるけれど、英国の暑さは、先ほどの窓の例で挙げたように、まるでオーブンの中にいるようだ。体が焼けるような熱風の中で少し動くと喉が渇く。緯度が高いせいか日差しも強く感じて、肌がじりじり焼かれる気がする。

 そのうえ、この国に多い石やレンガの建物も猛暑には圧倒的に不利だ。熱気で一度熱くなると、石やレンガはとても冷めにくい。だから夕方に気温が下がっても、部屋の中ではまだ暑く感じることもある。暑さが長く続くと、建物自体の温度がなかなか下がらなくなって、室内の壁まで温かくなる。そうなると涼しいはずの朝晩も暑い。試しにわが家の壁のレンガを触り続けてみたら、南向きの壁は昼間は手で触れないほど熱くなって、やっと手をつくことができたのは夜8時を過ぎてからだった。もうすぐ築100年になる古い建物で、最新の断熱材が使われていないせいもあるとは思うけれど、英国にはこういう古い建物も多いのだ

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週末に大混雑していた近所のパブの外の席。みんな外の席に座りたいので、建物の中に入ると笑っちゃうほどガラガラだった。これは猛暑祭りが始まる前の日曜日の午後8時ごろの写真。夏は日が長くて夕方からもゆったり過ごせるのは、ヨーロッパの夏のよいところだ。夏の夕べは美しい。筆者撮影

 今年は7月初めまで里帰りしていたので、久しぶりに日本の夏も経験した。その間に東京には、9日連続して35度を超える記録的な猛暑もやってきた。確かにあせもができるほど汗をかいたし、夜も寝苦しかったし、9日間は長かった。それでもまだ、東京とロンドン、どちらの暑さが楽なのかはっきり答えることはできない。

 日本の夏はどうしようもなく蒸し暑いけれど、暑さへの備えがよく整っている。ほとんどどこでも冷房が効いているので、どうしても暑くなったらどこかにふらっと入ってしのぐことが簡単にできる。これは本当に大きな違いだと思う。たとえ30度程度でも、ずっと高温の中で過ごすのはつらいものだ。他にもいろいろな形の携帯用の扇風機、巻くとひんやりするスカーフなどの暑さ対策グッズが充実しているし、街のあちこちにドライ型のミスト装置があって目にも涼しい(ヨーロッパには噴水があるけれど、涼もうとするとどうしても濡れる。ヨーロッパの人たちは濡れても気にならないようだけれど)。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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