桜散る甲州街道 「俗界富士」が見える町へ
撮影:内村コースケ
第7回 梁川駅(山梨県大月市)→大月駅前
<平成が終わり、東京オリンピックが開催される2019年から2020年にかけて、日本は変革期を迎える。名実共に「戦後」が終わり、2020年代は新しい世代が新しい日本を築いていくことになるだろう。その新時代の幕開けを、飾らない日常を歩きながら体感したい。そう思って、東京の晴海埠頭から、新潟県糸魚川市の日本海を目指して歩き始めた>
◆1日約8時間・15〜20kmの歩行ルートを繋ぐ「歩き旅」
東京から日本海側の新潟県を目指し、リレー形式で繋いでいくこの徒歩の旅は、今回で7回目。ここまでのパターンは次のような感じだ。朝9時ごろに前回ゴール地点(たいていは駅前)からスタートし、甲州街道(国道20号)を目安に、面白そうな裏道・脇道に外れつつ西へ進む。日没前後に手近な駅やバス停で一旦終了し、公共交通機関かあらかじめコインパーキングに停めておいた車で帰宅。これを1〜2週間おきに繰り返して、上の地図の徒歩ルートを繋いできた。
1回の歩行時間は8時間前後、距離は15kmから20km程度だ。東京都内は市街地のウォーキングを4回で歩ききり、都県境超えで軽登山を挟んで、前回からは田舎町の歩きになっている。そのように歩く舞台が変わっても、歩行のペースはほぼ一緒だ。ここまで単独行が1回、その他の5回は同行者1〜4人だったが、人数によるペースの違いもなかった。尚、全歩行記録は、登山情報サイトYAMAP(ヤマップ)を利用して、スマートフォンのGPSで軌跡を記録している。各回の記録は、YAMAPの活動日記として記事未掲載分の写真と共に公開しているので、興味のある方は参照してほしい。
また、この旅では、記事の執筆のほかに、自分のライフワークであるストリート・スナップの写真撮影を主目的にしている。1回あたりの総ショット数は600〜1000枚(同じ構図で連射したカットを含む)で、そのうち80〜100枚を編集して残し、記事に掲載するのは20枚前後というパターンも確立されてきた。歩くことだけに集中すれば、1回あたりの歩行距離はもっと伸ばせるだろうが、「道中を楽しみながら見聞する」ことを目的とした日本の徒歩旅行の標準的なペースとして、参考になるのではないだろうか。
◆繊細な季節の移ろいを感じながら
そんなわけで、今回も午前9時過ぎに前回ゴール地点のJR中央本線・梁川駅に鉄道で到着。証拠の自撮り写真を撮ってから歩き始めた。梁川駅は、山梨県大月市の東寄りの甲州街道(国道20号)沿いにある。この旅は、新旧甲州街道を辿ることそのものが目的ではないので、交通量が多い国道はなるべく避け、脇道・裏道を探しながら歩いてきた。今回も、駅の反対側に出て線路沿いの生活道路から歩き始めた。
桜が満開だった前回から1週間余り。この日(2019年4月15日)の甲斐路は、桜が散り始め、山肌の木々に若葉がつき始めていた。春の後半戦のスタートといったところだ。旅の間隔は、1〜2週間おきというペースに落ち着いているが、日本の繊細な季節の移ろいを実感できる良いペースではないだろうか。この「繊細な季節感」という要素は、日本の風景の最大の魅力だ。
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