コラム

「驕る習近平は久しからず」中国コワモテ外交の末路

2020年10月01日(木)17時37分

「傲慢に始まって卑屈で終わる」習外交

しかし「驕る平家は久しからず」。絶好調だと思われる「習近平大国外交」の転落も実に早かった。2017年1月のトランプ政権の誕生と、2018年の米中貿易戦争の勃発を境目にして、中国の「大国外交」の基軸となる米中関係が悪化の一途をたどり、徐々に全面対決の様相を呈し始めた。

その一方で、習主席の肝いりの「一帯一路」は、中国の利益のために多くの参加国の主権を脅かし、それらの国々の土地や資源の略奪につながる代物であることが露呈。こうした中で多くの国々がその枠組みから離れつつある。

そして前述のように、特に今年に入ってから傲慢と高圧の中国「大国外交」は世界中で反発と離反を招き、「地球外交」を展開していた中国はいつの間にか地球上でもっとも孤立した国の1つとなっていた。

それに対し、習近平政権とほぼ同時に成立した第2次安倍政権の継続的努力の甲斐もあって、日本の外交的存在感はかつての民主党政権時代とは比べにならないほど大きくなっている。安倍政権の下で日米同盟はかつてないほどに強化され、日本が提唱してきた日米豪印の連携によるアジア・太平洋地域の安全保障体制が出来上がりつつある。安倍首相が先進国首脳の中での先輩格と化していくことにつれ、日本はG7やG20などの国際会議の場でも大きな存在感を発揮するようになっている。

今年9月に菅政権が誕生した時の日本と中国の外交的立場は、習政権と第2次安倍政権誕生の時からまさに逆転している。中国外交が四面楚歌の状況となっているのに対し、日本の外交はむしろ、菅新首相の行った一連の首脳電話会談からも分かるように、多くの主要国との連携を緊密化してかなり優位に立っている。

だからこそ習政権は、恥を忍んで日本に対する前代未聞の「卑屈外交」を展開してきている。言ってみれば、これまで8年間の習政権の対日姿勢はまさに「前倨後恭(傲慢に始まって卑屈で終わる)」である。

しかし、ことの責任は全て日本だけでなく世界各国に傲慢で高圧的な態度をとってきた習政権、とりわけ習主席自身にある。覇権主義的な「大国傲慢外交」を改めない限り、日本との友好はもちろん、世界のどの主要国とも良い関係をつくれない。「驕る平家は久しからず」という日本古典からの言葉を、「驕る近平は久しからず」に変え、当の習主席本人に贈りたい。


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プロフィール

石平

(せき・へい)
評論家。1962年、中国・四川省生まれ。北京大学哲学科卒。88年に留学のため来日後、天安門事件が発生。神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。07年末に日本国籍取得。『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞受賞。主に中国政治・経済や日本外交について論じている。

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