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熱に浮かされたように強硬離脱に向かう英国 日系企業は最悪シナリオに備えよ
強硬離脱を訴えたジョンソン前外相に聴衆は熱狂 Toby Melville-REUTERS
[英イングランド中部バーミンガム発]バーミンガムで開かれている与党・保守党の党大会は強硬離脱(ハードブレグジット)派の決起大会のような熱気に包まれた。欧州連合(EU)からの離脱交渉に暗雲が立ち込める中、大会3日目の10月2日、強硬離脱派の頭目ボリス・ジョンソン前外相(54)が登壇すると、熱狂的な「ボリス」コールが沸き起こった。
メイ首相を激しく糾弾するジョンソン前外相(筆者撮影)
ボリスはトレードマークのボサボサの金髪を逆立てながら「チェッカーズ(テリーザ・メイ首相のEU離脱案)は詐欺そのものだ。もし我々が選挙民を欺くなら、不信感を増幅させることになる」とメイ首相を激しく糾弾した。「チェッカーズでは英国の主権を取り戻すことはできない。手錠をはめられてブリュッセル中を引き回されるようなものだ」
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メイ首相の離脱案
メイ首相は先の非公式EU首脳会議で(1)英国・EU間の「人の自由移動」は終結させる(2)アイルランドと英・北アイルランド間に「目に見える国境」を復活させない(3)製造業のサプライチェーンを寸断しないようEU離脱後も財については事実上、無関税で障壁のない自由貿易圏を保つ――ことを柱にする離脱案を拒否された。
EUから突き放され、崖っ縁に立たされているメイ首相(筆者撮影)
首相公式別荘チェッカーズで協議されたことから「チェッカーズ」と呼ばれるようになったメイ首相の離脱案は、英国がEUと同じルールブックを作って離脱後もEUとできるだけ摩擦のない通商関係を続けようというのが特徴だ。しかし離脱していく英国を特別扱いするとEUは一気に崩壊に向かうという危機感と、英国への不信感がブリュッセルに渦巻く。
「強硬離脱党」の様相
保守党の草の根支援団体コンサーバティブホームが主催したイベントには1時間半以上前から長蛇の列ができ、1000人超が詰めかけた。英国政治を間近でウオッチするようになって10年以上が経つが、こんな熱狂に出くわしたことはない。
会場の最前列にはデービッド・デービス前EU離脱担当相、プリティ・パテル前国際開発相、イアン・ダンカン・スミス元党首ら強硬離脱派の中心人物が顔をそろえ、穏健離脱(ソフトブレグジット)に大きく舵を切るメイ首相ににらみを利かせた。党首選の予行演習のように見えた。
会場の最前列に陣取った強硬離脱派のデービス前EU離脱担当相(右端)ら(筆者撮影)
強硬離脱派の集会はどこも超満員。並んでも会場に入れず、閉め出されることも珍しくない。保守党の中に「ハードブレグジット党」が出現したような雰囲気だ。政治家も支持者も「合意なき無秩序離脱」という交渉破綻リスクを顧みず、熱にうかされたように強硬離脱へと一目散に突き進んでいる。