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EU離脱か残留か、今もさまよう「忠誠心の衝突」
「あたかも両者の間に道がないかのように、『独立した主権国家間の協力』と『中央集権的な連邦制の超国家』という単純化され過ぎた選択肢、誤った対立概念、偽りのジレンマに私たちを陥れる愚をいかなるコストを払ってでも避けなければなりません」
「首相への忠誠心、20年をともにした忠誠心の本能は今なお健在です。私が真実の国益と考えるものへの忠誠心。その忠誠心の衝突があまりにも大きくなりすぎました。内閣に留まってこの衝突を解消するのは不可能であることに疑いを差し挟む余地はありません」
「それが私が辞任した理由です。(略)おそらくあまりにも長く私が格闘してきた忠誠心の悲劇的な衝突に対し、誰か別の人が答えを出す時が来たのです」
ハウの呼びかけに応じるように閣内、党内から造反が相次ぎ、サッチャーは辞任に追い込まれた。英国は次のメージャー政権下に起きた92年のポンド危機でERM離脱に追い込まれる。その後、誕生した単一通貨ユーロはハウが思い描いていたようには機能していない。
EUはドイツの首相メルケルを中心にさらなる統合の深化を目指している。そうした流れに逆らうように英国はEUとの交渉に臨み、『独立した主権国家間の協力』と『中央集権的な連邦制の超国家』の間のどこに着地できるかを模索している。25年前の「忠誠心の衝突」は今も行方を求めてさまよい続けている。