コラム

バックパックを背負った犬が歩くたび、自然が蘇る未来

2024年12月06日(金)17時30分

次のプロジェクトとしては、イノシシの行動を再現する計画に可能性がありそうだ。種子は固く締まっている土地より、適度に柔らかくなっている場所のほうがよく育つ。イノシシは根や食用キノコを探して地面を掘り返すのに、ひづめを使っていた。農場から豚を借りてきたり、子供たちが靴にひづめのような装備を付けて活動するのもよさそうだ。

今回のプロジェクトは小規模ではあるが、「ブラウンフィールド(工業跡地)」の生物多様性を取り戻す方法としては十分な可能性がある。この保護区は、60年代にイギリスの鉄道で多くの支線が廃止となったために不要となった元鉄道用地だ。


産業革命を生んだこの国は、80〜90年代にかけて最も劇的に、痛みさえ伴って脱工業化を経験した国でもある。工場や製鉄所、炭鉱が一斉に閉鎖され、エネルギー生産の変化によって、ガス工場は不要となった。そして今のイギリスは、環境を回復させる活動に積極的に取り組んでいる。

保護区の大半は外来植物などがのさばることで多様性が失われ、一部の動物がすみにくくなっている可能性がある。この土地を最大限に活用するには、努力と想像力が必要だ。

この実験から学べるのは、犬には種をまくこともできるということだけではない。1つのアイデアが未来へと伸びていく「種」になり得ることも教えてくれる。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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