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コロナ禍の英国医療を救った「100歳の英雄」キャプテン・トム、「スキャンダル禍」に飲み込まれる
女王からナイトの称号を授与されたときのムーア(2020年7月) MAX MUMBYーPOOL/GETTY IMAGES
<コロナ禍に医療従事者への支援を訴え「英雄的行動」で多額の寄付を集めた「キャプテン・トム」だが、家族の金銭スキャンダルが次々に発覚>
コロナ禍のさなかの2020年、彼はイギリスの英雄となった。99歳の退役軍人だった彼は100歳の誕生日までに、歩行器の力を借りて自宅の庭を100往復するという挑戦を開始。これと引き換えに国民保健サービス(NHS)の医療従事者への寄付を募り、国民に元気と希望を与えた。
集まった金額は約3900万ポンド(当時のレートで約50億円)。彼は女王からナイトの称号を与えられ、100歳の誕生日には空軍が儀礼飛行を行い、自伝はベストセラーになった。ところが今、彼──トム・ムーア退役大尉──の名から人々が連想する言葉は「スキャンダル」だ。
21年2月に死去した大尉の善意は誰も疑わないが、自伝の多額の売り上げはNHSに渡ったわけではなく、遺族が懐に入れていた。しかも大尉の名声が広まると、娘が彼の名前をすかさず商標登録し、さまざまな「キャプテン・トム」グッズを売り出したのは抜け目がないにも程がある。
新設されたキャプテン・トム財団をめぐっても、代表者である娘に多額の給与が支払われるなど、数々の不正が明らかになった。
とどめは、大尉が往復した自宅庭でのスパ建設。「キャプテン・トム」をたたえる慈善施設のように装っていたが、実は建築規制を擦り抜けるための嘘だったことが分かり、今年に入って当局の命令で取り壊された。これぞ「スキャンダル」。
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