コラム

ソ連を脱したバルト諸国の発展を見よ

2022年10月26日(水)11時30分

こうした歴史物語には、多少の自己欺瞞があるかもしれない。バルト諸国の人々が共産党に参加し、ソ連時代はソ連政府とソ連の安全保障機構に仕えたのは確かだが、それでも支配力はモスクワにあったから、究極的には「ソ連による支配」と表現するのがフェアだろう。

西側諸国の感覚としては、バルト諸国をロシアから「防衛」してあげるために、われわれが2000年代に親切にもバルト諸国をNATOに「承認」してやった、という考え方が一般的だ。ロシアの衛星国から脱してその後に繁栄を謳歌する国をロシア政権が毛嫌いするのは(ウクライナの例を見ても)明らかだから、そうした西側諸国の言い分にも真実はある。

でも、今回の訪問で僕の見方は少し変わった。独立を守る必要性をほぼ理屈抜きに感じ、ロシア政府の脅威を明確に見据えている国々を仲間に迎えることで、西側同盟は明らかに強化される。たとえばイギリスのように、もっと幸運な歴史をたどってきた国に暮らす国民は、自分たちの自由を彼らほどに強く愛することは決してできないのだ。

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プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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