クシュタール案と独自成長案、比較評価する段階ではない=セブンCFO

4月9日 セブン&アイ・ホールディングスは9日、2026年2月期の連結営業利益が前年比0.7%増の4240億円になるとの見通しを発表した。写真はセブン&アイのロゴで、3月6日に都内で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Ritsuko Shimizu
[東京 9日 ロイター] - セブン&アイ・ホールディングスの丸山好道・最高財務責任者(CFO)は9日の決算会見で、カナダの小売大手アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案と独自成長案を並行して検討しているものの「まだ不透明なものがある。比較評価する段階に至っていない」と述べた。
クシュタールとは引き続き「エンゲージメントを進めている」とし「株主価値向上のため最善の選択をしていきたい」と述べた。
初めて決算会見に臨んだスティーブン・ヘイズ・デイカス次期社長は、今後の事業運営について、より速く実行することと規律を持って進めることを強調した。
<26年2月期、構造改革一巡で純利益増>
2026年2月期の連結営業利益は前年比0.7%増の4240億円とほぼ横ばいを計画する。IBESがまとめたアナリスト16人の営業利益予想の平均値4577億円を下回った。
コンビニエンスストア事業は日米で伸長を見込むが、構造改革として進める一部事業の非連結化などが影響する。前期までに構造改革が一巡したため、大きな一過性の特別損失を見込んでおらず、純利益は同47.3%増の2550億円を見込む。
ヨーク・ホールディングスに属する子会社22社・持ち分法適用会社7社の計29社については、上期業績を反映させ、下期は持ち分比率に応じた収益を反映させている。また、セブン銀行の今期中の非連結化を計画していることから、上期業績のみを反映している。
今期の国内コンビニ事業は前年比4.8%増、北米セブンイレブンは同5.8%増を計画している。
国内コンビニ事業は販売単価の上昇がけん引する形で、既存店伸び率を2.5%増(前期は0.2%増)へと引き上げる。高付加価値商品の開発や品揃えの強化、セブンイレブンの宅配サービス「7NOW(セブンナウ)」の拡大などを図る。
31年2月期に売上高6兆円以上(25年2月期は5兆3697億円)、平均日販75万円以上(同69.2万円)、粗利率32.5%以上(同32.0%)へ引き上げる目標を掲げた。
インフレや金利高で苦戦している北米のコンビニ事業は、オリジナル商品の伸長やネット販売の推進、店舗拡大などを進める。今年度の既存店伸び率は1.5%減と、前期の2.7%減からマイナス幅縮小を目指す。
丸山CFOは、トランプ米政権の関税や移民政策で「消費マインドは低下しており、それを織り込んでいる」と説明。デイカス次期社長も、米関税は「消費者行動にマイナス。消費者は、どう金を使うかより慎重にならざるを得ない」と指摘した。こうした不透明な環境下では「よりスピードを持ってバリューを提供できるリテーラーが勝つ」と話した。
25年2月期の連結営業利益は前年比21.2%減の4209億円と、会社予想の4030億円を上振れて着地した。純利益は同23.0%減の1730億円。米セブンイレブンの不採算店舗閉鎖や宅配サービスの戦略構築に伴う損失など計2209億円の特別損失を計上(前期は2459億円)した。丸山CFOは「25年2月期は構造改革の集大成。26年2月期以降の利益大幅回復につながる」と述べた。
同社は3月、北米コンビニ事業の新規株式上場(IPO)を2026年下半期までに目指すほか、30年度までに総額2兆円の自社株を取得することを発表した。今回、今期中(26年2月期)の6000億円の自社株取得枠を設定した。
市場が不安定になった場合のIPOについて、デイカス次期社長は「タイミングを少し遅らせる可能性も否定はしない。成長投資は変わらない」とした。
将来の資金配分として、30年度までの7.5兆円の原資のうち、約40%を株主還元、約40%を成長投資、約20%を負債返済に充てる。北米では、25―30年に1300店舗の拡大を計画している。丸山CFOは「魅力的なM&Aには対応できるよう財務健全性を強化していく」と述べた。