コラム

ロックダウンで飲み過ぎ、食べ過ぎが加速する

2020年06月11日(木)17時30分

一般医の診察も受けられず

近年、僕たちの「座ってばかりのライフスタイル」は危険だと叫ばれ続けてきた。すると今度は、家にいろと言われるようになった。ジムなど日常の運動ができるシステムは消えうせ、「通常の」仕事生活でカロリーを消費することさえストップした。

「ストレス食い」に走る人もいれば、僕のように毎晩退屈しのぎにボトルを開ける人もいる。認めるのも恥ずかしいが、他の楽しみがなくなったことが僕から熱意を奪い、酒の誘惑に弱くなってしまったようだ。長期にわたるこのロックダウンは、心理的な疲れが大きい。人々は当初は実行予定の「プロジェクト」の数々を宣言していた(今度こそフランス語を習得するぞ! ズンバ・エクササイズのオンラインレッスンを受けるぞ!)が、今ではむしろテレビシリーズの一気見ボックスセットについて話すほうが多くなった。

各地の一般医は3月半ばから休診し、診察は電話か特別な場合だけ個人的に医師に診てもらう、という状況になっている。それですら、国民保健サービス(NHS)に負担をかけたくないし、この時期に病院に足を運ぶのは危険だとも考えて、人々は診察を受けるのを避けている。治療が遅れてあらゆる病気が深刻化や慢性化するのではないかと心配で仕方ない。特に、癌の早期の兆候を見つけて迅速に検査を勧めることにかけて、一般医は大きな役割を果たしている。大勢の人が確実に、早期診断や適切な治療を逃してしまうだろう。

僕たちは日々、新型コロナウイルスで亡くなった人数を耳にする。いつかは、ロックダウンのせいで亡くなった推定人数も明かされるかもしれない。

<本誌2020年6月16日号掲載>

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2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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