米、豪州への原潜売却巡り慎重論 中国への抑止力に疑念

米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に基づく米国によるオーストラリアへの原子力潜水艦売却に慎重論が高まっている。写真は3月、西オーストラリア州沖で確認されたバージニア級潜水艦。(2025年 ロイターCOLIN MURTY/Pool via REUTERS)
Kirsty Needham
[パース 10日 ロイター] - 米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に基づく米国によるオーストラリアへの原子力潜水艦売却に慎重論が高まっている。オーストラリアへの潜水艦売却が、中国への抑止力を低下させる結果につながるとの疑念が米政権内に出ているためだ。
マールズ豪国防相は3月、ヘグセス米国防長官との会談後、米国が米海軍の目標達成に向けて潜水艦の製造を増強できるかどうかが、オーストラリアが2032年からバージニア級潜水艦3隻を購入できるかどうかの鍵を握ると述べた。
オーストラリアは25年に原潜造船設備改善のため、米国への20億ドルの支払い期限を迎える。米政権は一段の資金供出を求めていると、マールズ氏は3月に述べていた。
専門家や資料によると、オーストラリアは中国に対する攻撃型潜水艦の利用を巡る議論を躊躇しているため、米国による攻撃型潜水艦の売却はインド太平洋地域における抑止力の強化につながらないとの懸念が高まっている。
ハドソン研究所の海軍関係専門家、ブライアン・クラーク氏は「軍事的な衝突を抑止するには、有事の際の攻撃型潜水艦の使用について平時から話しておく必要があるが、オーストラリア側にそうした威圧に前向きな意向が見えていない」と指摘。中国による台湾封鎖を想定した最近の演習で、南シナ海での中国軍を標的とした攻撃には原潜を使用せず、航空戦力などが中心だったという。
こうした懸念は、2月の米議会予算局(CBO)の報告や3月の海軍の目標遅延に関する証言でも示されている。当局者は、台湾有事の際にオーストラリアが米軍に加わるかどうかが明確でないため、バージニア級潜水艦を代替艦なしにオーストラリアに売却することは危険だと指摘している。
米海軍は24年9月、中国との有事対応準備の期限を27年と定めており、この問題は緊急性を増している。