- HOME
- コラム
- Edge of Europe
- 英高級住宅地で繰り広げられる、移民と異文化と犯罪と…
英高級住宅地で繰り広げられる、移民と異文化と犯罪と混乱の大カーニバル
地元の店は窃盗や窓を割られるのを恐れて、窓には板を張り、多くの店がこの週末の間は休業する。カーニバルのルートに沿ってずっと、通りに面した家々やアパートが板張りされている。これらの板張りのいたるところに、激しい落書きがされる(ベルリンの壁みたいに)。以前の板張りを使い回していて、でも板をバラバラに取り付けるから、2年前の「絵」がまるでパズルみたいにごちゃごちゃに並んでいる、という建物もある。
カーニバルはその場にいると怖いというほどではないが、僕は常に警戒を怠らないし、身を守るすべをいつでも意識している。それに、全体的に漂う無秩序と反社会的態度には驚かされる。路上に翌朝残されたおびただしいゴミ(と嘔吐物)にはうんざりする。とりわけ不快なのは、ドラッグを使用した証拠に、無数の金属製小型缶が散らばっていること。これには笑気ガス(亜酸化窒素)が詰められていて、手軽で安くハイになるために吸うのだ。
僕にとって、カーニバルの最良の時は、始まる前日だ。地域一帯に地元の黒人住民のざわめきが広がる。彼らは何カ月もこのカーニバルを待ちわびていて、準備に大忙しだ。僕にはその気持ちがよく分かる。彼らはカーニバルを成功させたいし、トラブルなど起こってほしくない。伝統のスチールバンドが最終リハーサルを行い、カーニバルの正式スタートとなる前夜にコンペが開催される。小さな露店が並び、ハッピーな雰囲気が漂っている。
僕は昨年、偶然このカーニバル前日の様子を目にして、すごく魅力的でフレンドリーだと感じた。それこそまさに、このカーニバルが誕生した当初、まだこれが地元の文化的アイデンティティーを祝う祭典であって、ドラッグと酒で盛り上がろうとする何百万人もの人々が「ハイになる」絶好の機会だと押し寄せてくる全国的なイベントになる前に、このカーニバルそのものに感じられていた本来の雰囲気なのだろう。

アマゾンに飛びます
2025年4月15日号(4月8日発売)は「トランプ関税大戦争」特集。同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか?
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ使い回しをやめるまで 2025.04.05
お手軽スポーツ賭博がイギリスを蝕む 2025.04.02
もうアメリカにタダ乗りできない...トランプ2期目でさすがに欧州が目を覚ました 2025.03.19
イギリス流のトランプ操縦術が始動 2025.03.05
移民の多い欧州の国々で増え続けるテロ事件...「防止」組織はテロを止められるのか 2025.03.01
政治改革を「いかにもそれやらなそう」な政党がやるとどうなるか 2025.02.15
「嫌な奴」イーロン・マスクがイギリスを救ったかも 2025.02.07