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なぜ中国がTPPに加盟申請? 唐突ではない「アジア太平洋自由貿易圏」と「一帯一路FTA」構想
一帯一路FTAとは、具体的にどういうことか。
まず短期的には「伙伴(パートナーシップ)関係」と呼ばれる、関係国との多岐にわたる分野での、拘束力をもたない協力の強化を行う。次に、中長期的に、それを格上げする形でFTA網を広げていく──という戦略である。
習主席は、90余カ国・地区と「伙伴関係」を構築済みとしていた。また「伙伴関係の構築を通じ、世界と新たな発展を実現する」としていたという。
先進国との「断層」
ただ、アメリカ・日本・EU(欧州)という、世界の3大先進地域とは「伙伴関係」を結べずにおり、牽制され距離を置かれている結果となっている(G7とも言える)。
特にEUは、一帯一路の行き先であり、「欧州への障害なき通商交易路の確保」そのものが、戦略の要でもあった。それなのに、今年の投資協定の凍結といい、最近は不協和音が大きく響いている。
中国は、人民元の国際化を目標としており、AIIB(アジアインフラ投資銀行)という国際金融機関の設立も行った。これは明らかにアメリカ支配への挑戦であるはずなのに、アメリカと敵対したいとは思っていないというシグナルを送ることも、しばしばある。
本気でアメリカと戦ったら勝てないのがわかっているからなのか、敵対ではなく共存が目的なのか。
中国の大きな弱点の一つは、「世界共通の貿易のルールを作るのは誰か」の部分で、ほとんどのジャンルでイニシアチブをとれる状態にないことである。これは、「ルール作りを制する者が、貿易を制す」と言われることがあるほど、大事な要素である。
ジャンルごとに異なるが(例えば農業と自動車では異なる)、大まかに言えば、世界をリードしているのは圧倒的にアメリカとEUである(ジャンルによっては国連が入る)。
RCEPとTPPでは水準がかなり異なる(TPPとTTIPも異なる)。アメリカが抜けたあとかなり緩和された部分があるとはいえ、中国にとっては、RCEPでは大丈夫であっても、TPPの水準には、現段階では大変難しいと言えるのではないだろうか。
中国が水準の高い経済協定の経験ができないのも、ルールづくりで主要なアクターになれないのも、中国の政治体制に根本の問題があると言えるだろう。
アメリカがTPPにいれば、経済協定を使って、中国を少しずつ民主体制のほうにひきずりこんでゆき、中国の国家資本主義体制を崩すという、長期的で壮大な戦略を描けたかもしれない。実際、オバマ大統領が描いた戦略は、大まかにはこのようなものだったという。
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